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秋の空[13] ページ14

ちゃんと喋るから、その手を離して。


 オレは北山の手に自分の手を重ねて腕を下ろす。
 

「……好き、とは違うかもしれない」


 一瞬だけ眉を顰める。


「どういうこと?」



「北山には、

 背中を預けてもいいって思えるんだ」



 何か言葉を当てはめようとしても、

 適当な言葉が見つからない。

 絆とかで例えるのもなんだか陳腐な気がした。


 また、北山の表情が七変化している。



 小首を傾げる目の前の小動物を

 今すぐ捕まえたい衝動に駆られながら

 言葉を続けた。


「だから…」


「わかった!だったらいい」


「えっ?」


 さっきまで聞いてくれてたのに、

 最後まで喋らせてくれないのか。



「テキトーにキスしたんじゃないなら、

 それでいいや」


 ふいと顔を背ける。



 ……抱きしめたい。

 と思ってしまった。


 
「北山は、怒ってないの?」

 キス、したこと。



「怒ってるとしたら、

 何も言わずに帰ったこと、かな」



「嫌だった?」


「ばっ…そんなこと聞いてくんな!」


 北山はバッグを持つとドアに向かって歩き始めた。

 後ろ姿でも耳が赤いのがわかる。


「さっさと帰ろーぜ」

 ただでさえ今日は遅かったんだから。

 どすどすと音を立てながら歩いていく。


 やばい。

 かわいい。

 
 オレは、荷物を肩に提げると北山の後を追った。





 物陰から話を聞かれていることにも気づかずに。



to be continue...

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作者名:lettuce | 作成日時:2022年9月3日 23時

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