◯. ページ28
診察室に入って、服を脱ぐ。
ちゃんと上下わかれた服を着てきたから、検査用スカートへの着替えも簡単。いつも通り。ちょっと検査方法が違うだけ。そう思っていた。
検査は、なにも問題なかった。
問題は、そこじゃなくて。
医「はい、じゃあ下脱いで、そこのスカート履き替えて」
A「あっ、はい、」
カーテンの向こうから聞こえてくる指示。よくある光景。
ただ、その後聞こえてきたのは耳を疑うもので。
医「今時処女証明って…しかもこれって、もし違ってもそうだよって書かなきゃいけないんだよね?」
看「ですねー」
医「はぁ…めんど…てか枕してない証拠に処女診断書って…そもそも疑われることした方が悪いでしょ」
看「ほんとですよねー、プロならまだしも一般人があんな写真…」
医「ほんとめんど…」
反論すればいい。
そんなことしてないって。
言えばよかっただけなのに。
相手は医師である、ということと、これから検査をしていただかないといけない、ということ、なにより[疑われることした方が悪い]という言葉が刺さって。
なにもいえなかった。
医「準備できましたー?」
A「あっ…はい…」
医「できたなら声かけてくださいよ…はい、座ってー、いいですねー?始めますよー」
A「お願いします…」
検査はサクサク進んだが…
医「えっ、ほんとに処女じゃん」
看「この年齢で?やば笑」
医「魅力がないから、この仕事できるんだよ笑 色気あったらできないでしょ笑」
看「ですねー笑」
隔てるのはカーテン1枚。
聞こえてるのなんかわかってるはず。
わざと言ってる。
私に聞こえるように、わざと。
医「はい、いいです。じゃあ、服着てねー、出血あるかもしんないからナプキンもってってー」
A「はい…ありがとうございました…」
これが、例えば週刊紙の記事だったり、テレビのコメンテーターが話していたりしたら、まだ。
だけど、これが、医師と看護師の会話であるからこそ。
A「………つらぁい………」
.
みんなに、会いたい
.
.
.
.
A「…ってことが、あった」
大ちゃんはずっと頭を撫でてくれて。
翔太くんがずっと背中を撫でてくれて。
阿部ちゃんは、相槌を打ちながら訊いてくれて。
口からとめどなく溢れた、報告。
こんなこと話しちゃうなんて、弱くなったな…
いや、
話せる相手ができて、強くなったのかもしれない
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作者名:まめ | 作成日時:2023年2月2日 6時