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第三十四話 ページ46

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あの日、Aは学校で、いじめっ子たちにブチ切れたという。
堪忍袋の緒が切れた、なんてもんじゃない。あれは、別人格だとしか思えなかった。先程のような、Aでありながら、Aではないもの。
そういえば、阿月が突然儀式の実行を宣言したのは、あの数日後。偶然にしては、少々出来過ぎな気もする。
(もしかして、あの人格変化が儀式の頃合いを示す合図のようなものだったのか?)
「姉上!!」
隣で考え込んでいる美玖をよそに、傘が声を上げる。その声に顔を上げると、ボンヤリと宙を見つめるAの姿が目に入った。
「姉上!…よかったぁ」
姉が目を覚ましたことにすっかり安心しきったようで、傘は金糸雀の瞳から大粒の涙を零し始めた。
一方Aの方は、状況を飲み込めていないらしく、わんわん泣く弟を前に、対処に困っている。
あっちへこっちへ視線を彷徨わせたのち、ふと、美玖の方へ視線を向けた。
それを、わたしにどうにかしろと?
無理なお願いだ。第一、ついさっき傘と約十年ぶりの再会を果たしたというのに、この娘は何を言っているんだろう。しかも、再会のきっかけは姉の暴走とは。記憶がないとはいえども、弟の子守りくらい、何とかしてほしい。
視線を外し、「自分でやれ」という雰囲気を出す。が、大袈裟に肩を落とすAの姿は、まるで仔犬。美玖は母性のど真ん中を射抜かれ、溜息を吐きつつ、傘に話しかけた。
「おい傘。姉ちゃんが困ってんだろ、もう少し静かにしてやれよ。ったく、マジダルい、マジめんどい…」
「!あっ、姉上、僕ったらついうっかり……姉上が目を覚ましてくれて嬉しくって……」
またもや涙腺が崩壊した傘は、自らが泣いていることに気がついていないらしく、鼻水やらなんやらを、そっとAが拭ってやる。
「A、その、なんだ。…大きくなったな」
突然の美玖の言葉に、目を丸くするA。だがすぐに柔らかく微笑んだ。
「そうですね。美玖様とこうして一対一でお話するのは、いつぶりでしょうか」
わたしには昨日の事のように思えます、と言った。穏やかな声色だった。
「儂は、手前を見捨てた」
「美玖様は、わたしを見捨ててはいません」
「儂は、手前を裏切った」
「美玖様は、わたしを裏切ってはいません」
「儂はーー」
「美玖様は、何も悪くありませんし、何も間違えてはおられません」
美玖が放った言葉全てを否定し、遮ると、もう一度微笑んで、囁いた。
「悪いのは、全部わたしです」
美玖にはそうは思えなかった。

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設定タグ:双星の陰陽師 , 水度坂勘久郎・雲林院憲剛 , 弓乃   
作品ジャンル:恋愛
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どこんじょう(処罰対象) - 弓乃さん» こちらこそよろしくお願いします! (2019年3月22日 21時) (レス) id: 45a23aa5e3 (このIDを非表示/違反報告)
弓乃 - どこんじょうさん» 遅れてごめん!明けましておめでとう!ID違うけど私だよ!今年もよろしくお願いします!!! (2019年2月3日 16時) (レス) id: 7a5e1ee815 (このIDを非表示/違反報告)
どこんじょう - 新年明けましておめでとうございます!今年も期待して続きを待っています! (2019年1月1日 22時) (レス) id: 5e33bfab9e (このIDを非表示/違反報告)
どこんじょう - 弓乃さん» いえいえ!ってか、じぶんのほうが頑張らなきゃいけないっていう...展開は重要ですのでじっくり考えてください!私はいつでも暇なのでいつまでも待てます!過去編は長くてもいいんじゃないかな?過去編って重要だし。頑張ってください! (2018年12月29日 17時) (レス) id: 5e33bfab9e (このIDを非表示/違反報告)
弓乃 - どこんじょうさん» どこんじょうちゃん!お久だね。今ちょっと展開を考えてて‥‥‥全然更新できてなかったんだけど、どこんじょうちゃんがそう言ってくれるなら頑張ろうかな。有難う。感心であってるよ。過去編長くてすまんね。才能、かぁ。私なんかは全然だよ、でもありがとうね。 (2018年12月28日 17時) (レス) id: 7a5e1ee815 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:弓乃 | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/novel/mamamitu/  
作成日時:2018年3月3日 20時

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