第三十話 ページ42
「御指導、有難う御座いました!」
きちっと礼をして、邸を出て行く。丁度入れ替わり出来た膳所家傘下の陰陽師に愛想よく挨拶を交わして、姿を消した。
この愛嬌の良さが可愛がられる秘訣であることを、美玖は知っている。
「明日は何を教えるかな?」
そう、一人微笑んだ。
********
後日、仕事の関係で凛凪邸に行く事になった。書類だのなんだのを回収、並びにケガレ祓いの組み合わせ確認など、本当は当主の役目ではない雑用をやらされるとのこと。今回のケガレ祓いはランクが高いらしいが、それをわざわざ傘下だからといって出向かなければならないのだろうか。美玖には理解不能だった。
天気も微雨。本降りではないこそすれ、ジトジトとした雨というのは、拍車を掛けて機嫌を悪くする。
「美玖様、お出掛けですか?」
傘下のものが駆け寄ってくる。普段声を掛けるような人物では無いが、曖昧に頷いてみせた。
「その、これ、A様に渡して頂けないでしょうか」
「Aに?」
予想の斜め上の解答に、思わず聞き返してしまう。凛凪の名は有名で、その娘である彼女も知られていてもおかしくは無いのだが、贈り物の類など、初めてだ。もしかして、愛弟子である彼女を誑かして膳所本家に気に入られようと言う算段だろうか。
警戒した様子を遠慮することなく顔に出すと、少しビクビクしながらも理由を話してくれた。
先日、自分の息子がAに助けてもらったらしく、お礼をしたかった。そこで、美玖が丁度凛凪邸に行くことを知り、僭越ながらも…と言うことらしい。
箱の中身は金平糖や最中、せんべいにどら焼きなど、和菓子の詰め合わせだと言う。
Aが好きそうな甘味の数々に頬を綻ばせた。きっと、喜んで咀嚼することだろう。
それだけで、美玖の心は晴れやかになった。
「あいわかった。ちゃんと渡してやる」
********
「また少し窶れたか?」
眉を顰めて心配気に問う。
「そうですか?今日はちゃんと睡眠を取ったんですが」
困ったように微笑む彼女に、何とも言えない気分になった。
若葉色の髪を一房にまとめて、緩々とした雰囲気を纏った彼女、凛凪阿月はAの実母で、美玖の友人である。
「取ったって、お前の場合仮眠程度だろ。つーか、はってなんだはって。普段は寝てねぇのか」
「失敬な!私だって仮眠程度を睡眠という訳じゃないです!」
心底不愉快とでも言いたげに頬を膨らますが、残念ながら、恐怖心というものは一ミリも感じない。
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どこんじょう(処罰対象) - 弓乃さん» こちらこそよろしくお願いします! (2019年3月22日 21時) (レス) id: 45a23aa5e3 (このIDを非表示/違反報告)
弓乃 - どこんじょうさん» 遅れてごめん!明けましておめでとう!ID違うけど私だよ!今年もよろしくお願いします!!! (2019年2月3日 16時) (レス) id: 7a5e1ee815 (このIDを非表示/違反報告)
どこんじょう - 新年明けましておめでとうございます!今年も期待して続きを待っています! (2019年1月1日 22時) (レス) id: 5e33bfab9e (このIDを非表示/違反報告)
どこんじょう - 弓乃さん» いえいえ!ってか、じぶんのほうが頑張らなきゃいけないっていう...展開は重要ですのでじっくり考えてください!私はいつでも暇なのでいつまでも待てます!過去編は長くてもいいんじゃないかな?過去編って重要だし。頑張ってください! (2018年12月29日 17時) (レス) id: 5e33bfab9e (このIDを非表示/違反報告)
弓乃 - どこんじょうさん» どこんじょうちゃん!お久だね。今ちょっと展開を考えてて‥‥‥全然更新できてなかったんだけど、どこんじょうちゃんがそう言ってくれるなら頑張ろうかな。有難う。感心であってるよ。過去編長くてすまんね。才能、かぁ。私なんかは全然だよ、でもありがとうね。 (2018年12月28日 17時) (レス) id: 7a5e1ee815 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:弓乃 | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/novel/mamamitu/
作成日時:2018年3月3日 20時