第二十二話 ページ34
もう、誰も言葉を発しなかった。
ただただ一心不乱に攻撃を仕掛け、躱し。その繰り返しを軽く見積もってかれこれもう四十分はしているんじゃないだろうか。
呪装の維持もきつくなってきた。限界とも言っていい。
(いや、俺!限界ぐらい突破しろよ!それぐらいできなきゃ、あいつを守ることなんて出来ねぇんだよ!)
悲鳴を上げる体に鞭を打ち、心の中で自分を鼓舞する。そうでもしなければ、もう倒れていてもおかしくはない。それほどまでに、憲剛は追い詰められているのだ。
「出来ました!」
高めの声が聞こえる。詠唱が終わったということだろう。もうそろそろ、発動する。
阿月が叫んだ直後、Aの体が大きく跳ねる。
「ぁぁ…ぁう・・・がはっ。
あぁぁぁぁ。ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!」
断末魔のような、Aのものとは信じ難い悲鳴が鼓膜を揺らす。
すると、中から真蛇が一体。かなり大型で、呪力も多い。疲れた身体では、勝てるかどうか。
そういえば、阿月はAの陰の気が反発してケガレとなったと説明していた。真蛇が出てくるほど、Aは暗い感情を持っていたのか?自分達の前では、そんな様子、見せたりはしない。言ってくれたら、助けになったかもしれないのに。それほど、自分達は頼りなかったのか。信頼して貰ってなかったのか。こんな風に、真相を知りたくはなかった。
「くそっ、くそっ、くそっ!陣の亀鏡 殲ぱく!」
怒りを乗せて呪文を唱える。
「ぎひゃぁぁ!!」
汚い悲鳴が耳をつく。キーンと耳鳴りがする程大音量。
ダメージは食らったようだ。あと、もう一息。
「行くっスよ!蒼弓龍眉之諧謔!」
長い龍の腕を振る。これがトドメとなり、セーマンを描いて消えていった。
「終わった…のか?」
息を取り乱しながら、美玖が言う。
疲弊しきっている体を無理やり動かせて、Aの所へ歩を進める。今の自分の最高の速さで。
ようやく辿り着いて、Aの近くで座り込む。勘久郎も、隣で。美玖と阿月は座らずに立ったままだった。
「Aっ…!」
ドーマンは消え、すぅすぅと規則正しい寝息を立てる彼女の名前を呼ぶ。
「気付いてやれなくて、ごめんス。もう、関わらないからっ…」
普段は泣き事を言わない幼馴染も、今は、今だけは、懺悔の雨を降らせている。美玖は、俯いている。その下には、シミが出来ていた。
「この時、俺らは誓った。もう、Aとは関わらない事を」
話終わった後、勘久郎は遠くを見つめていた。
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どこんじょう(処罰対象) - 弓乃さん» こちらこそよろしくお願いします! (2019年3月22日 21時) (レス) id: 45a23aa5e3 (このIDを非表示/違反報告)
弓乃 - どこんじょうさん» 遅れてごめん!明けましておめでとう!ID違うけど私だよ!今年もよろしくお願いします!!! (2019年2月3日 16時) (レス) id: 7a5e1ee815 (このIDを非表示/違反報告)
どこんじょう - 新年明けましておめでとうございます!今年も期待して続きを待っています! (2019年1月1日 22時) (レス) id: 5e33bfab9e (このIDを非表示/違反報告)
どこんじょう - 弓乃さん» いえいえ!ってか、じぶんのほうが頑張らなきゃいけないっていう...展開は重要ですのでじっくり考えてください!私はいつでも暇なのでいつまでも待てます!過去編は長くてもいいんじゃないかな?過去編って重要だし。頑張ってください! (2018年12月29日 17時) (レス) id: 5e33bfab9e (このIDを非表示/違反報告)
弓乃 - どこんじょうさん» どこんじょうちゃん!お久だね。今ちょっと展開を考えてて‥‥‥全然更新できてなかったんだけど、どこんじょうちゃんがそう言ってくれるなら頑張ろうかな。有難う。感心であってるよ。過去編長くてすまんね。才能、かぁ。私なんかは全然だよ、でもありがとうね。 (2018年12月28日 17時) (レス) id: 7a5e1ee815 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:弓乃 | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/novel/mamamitu/
作成日時:2018年3月3日 20時