32 - Yuri Side ページ33
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- 侑李side
それから1ヶ月くらい経ったある日。
一か八かの勝負は好きじゃない。
でも思い切って行動に移すことも時には必要だと思う。
思い切りすぎたとは思うけど。
A「え……どうして…？」
居酒屋の個室に招き入れた瞬間、困惑した顔で僕を見るA。
騙してごめん。僕は敢えて修羅場をプロデュースした。
主演は…
美波「久しぶり〜。大貴といた時に会った以来かなぁ？」
にっこり微笑む彼女。
すぐに泣くAに比べて、感情的にならず冷静に話せる優秀な演者。
心の内で何を考えてるか分からないけど。
美波がAに会って話したいというので事前に2人で入念に計画したこの飲みの席。
美波と今回じっくり話して全体像が分かった。 あとは演者の皆が僕の思う通りに動けばいいんだけど。
(美波「ま、私がちぃちゃんの台本通りにやるかどうかは気分次第ね〜」)
取り扱いが面倒な若手女優は嫌われるよ、なんて言ったらぶっ叩かれた。
美波「知ってるかな？大貴が大切にしてるアルバムがあるの」
A・僕「「…アルバム？」」
美波「表紙には何も書いてなくて…何のアルバムかな？と思ってこっそり見たことがあるの。
ちぃちゃんとAちゃん、3人で写ってる写真が入ってた。
幼い頃の3人が部屋で雑魚寝してる日常の写真とか、入学式とか学校行事の写真まで凄い量。
お母さんが写真撮るの好きなのかね？」
お母さんに会ったことないんだ〜と頬杖つく美波の薬指には輝くリング。
意地悪だなぁ…
美波「…で、すごい笑っちゃったんだけど、写真の裏側にいちいちコメント書いてあったの。
『知念が俺のゲーム勝手に全クリしてキレた』とか『花火大会、Aのゆかた可愛かったー』とか。
あ、コメントが書いてあったのは中学までだったかなぁ？ 大貴は今も仕事が辛そうな時、そのアルバムを開いて幸せそうに見てるよ」
なんだそれ…
幼馴染2人のこと本当に大事に今も思ってるんだよ…、なんて僕の方を見ながらニコニコする。
台本に無いこと言わないでよ…
Aはともかく……
なんで僕まで泣きそうになってるんだろ。
チラッと横を見ると天井を見上げて涙堪えてるAがいて、可笑しくて涙が引っ込んだ。
A「そう…だったんだ…」
掠れた声で呟いた。
美波…
まだ本題に入ってないのに泣かせないでよ。
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作者名：もちもち
| 作成日時：2019年7月19日 0時
