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旅館に着いた俺たちは、土砂降りの中車を降り駆け足で玄関まで行った。
JH「あっちゃー、すっごい濡れたねー」
皆いい感じに濡れていて、ユンギヒョンなんてグレーのパーカーが雨で濡れて違う色になっていた。
軽く水を切って館内に入った俺たちを出迎えたのは、小柄な女性だった。
年はおそらく俺と変わらないくらいの女性は、黒髪を綺麗にまとめており、身につけている着物が上品さを漂わせていた。
「ようこそお越しくださいました」
笑顔で迎えた彼女に、俺は思わず息を飲んだ。
彼女に会ったことがある。それも、随分と昔に。
いや、彼女だけじゃない。この空間全てが、俺はここを知っているんだと感じさせた。
なんとも言えぬ既視感に唖然とする俺をよそに、テヒョニヒョンが気さくに話しかけていた。
俺たちが防弾少年団と聞いて、少しだけ慌てた彼女が、昔会った女の子を思い出させる。
「Aと申します」
その名前を聞いて遠い記憶が蘇った。
そうだ、Aだ。あの時、ここで出会ったAがあの頃と変わらない笑顔でこの場所にいる。
元気だったとか、今までどうしてたのとか、いろいろ聞きたいことが沢山あるのに、どうしても口に出せない。
だって、きっと彼女はもう俺のことなんて覚えてないだろうから。
先ほど自己紹介した時、俺の名前を聞いても何の反応も見せなかった。
俺が一方的に彼女のことを覚えていて、好きだっただけの話。
だから、この想いは昔のまま、あの楽しかった思い出のままで終わらせようと思った。
俺もAも、あの頃とは違う道を歩んでいるから。
今は、もう一度会えたことだけで幸せなんだから、と自分に言い聞かせるようにしたけど、俺は彼女の後ろ姿から目が離せなかった。
JM「ジョングク、もしかしてあの女将さんに惚れたの?」
俺のことをよく見ているジミニヒョンは、すかさず声をかけてきた。
JK「違いますよ。ただ、昔会った人にとてもよく似ていたから、懐かしいなと思っただけです。」
余計なことを言おうものならすぐにからかわれそうだったので、さらっと言ってのけた。
JM「ふーん、そうなんだ。ジョングク、ずっと目で追ってたからもしかしてと思ったんだけどね〜」
気が変わったら相談に乗るよと言って、俺の肩を小突いた。
MN「えーと、部屋割りなんだけど、俺と運転手さんは一緒の部屋だから、残り4部屋をクジ引きで決めよう」
俺たちは紙に番号が書かれただけの簡単なくじ引きをして、それぞれの部屋に別れた。
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あーちゃん(プロフ) - とりま最高 (2019年10月10日 16時) (レス) id: 578ed0c715 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 愛(サランさん» ありがとうございますm(_ _)m 次回作もお楽しみに…笑。 (2019年3月21日 16時) (レス) id: 6fb3a64d96 (このIDを非表示/違反報告)
愛(サラン(プロフ) - お、おわり、、 めちゃくちゃ面白かったです!ありがとうございました!次もあるなら待ってます!お疲れ様でした (2019年3月21日 14時) (レス) id: bbbfbb5774 (このIDを非表示/違反報告)
つき - 凄い面白いです!更新頑張って下さい! (2018年12月17日 15時) (レス) id: e9fb8ac079 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ちあさん» ありがとうございます。頑張ります♪ (2018年12月6日 14時) (レス) id: 62b0c80745 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2018年9月14日 15時