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レンが言った通り、外は大粒の雨が降っていた。
もう、今日は客も来ないだろうと店仕舞いの準備に取り掛かろうとした時、一本の電話が鳴った。
「はい、旅館葉月です。本日ですか?ええ…畏まりました。大丈夫なのですが、あいにく今日はスタッフがおらず大したおもてなしができそうにありませんが、それでもよろしければ…」
急な予約の電話に驚いた私は、9名という人数を聞いてさらに驚いた。
なんでも、ここ水安保と市内を繋ぐトンネルがこの雨で土砂崩れにあい帰れないとのことで、藁にもすがる思いで連絡したそうだ。
久しぶりの予約で、しかもご新規さまということでとても嬉しいではあるが、今日に限って仲居さんも厨房スタッフも休みなので大したおもてなしができるか不安だった。
「いえいえ、こちらこそご予約ありがとうございます。道中お気を付けてくださいね。お待ちしております」
どうやら近くにいるらしく、到着するのに時間はそうかからないだろうと、私は急いで出迎えの準備に取り掛かった。
「レンー!!大変!今から9名のお客様が来るの!それも、ご新規様!」
厨房の食材を整理していたレンは、いきなりのことに持っていた人参を落としそうになった。
「え、今から?!大したもの作れそうにないけど…あるもので何とかするしかないか!」
ここは俺に任せて、お前は出迎えの準備をしてきなと、私の頭をぽんと撫でた。
この大雨の中、家に帰れないという状況から、お客様もたいそう不安だろう。
ここにいる時だけは、どうか安心してくつろいでもらいたい。
母の愛したこの旅館は、訪れるお客様に様々な形で癒しを与えていた。
どんな状況でも、くつろげる場所になれるよう思いを込めて…
「お母さん、私頑張るね」
病院にいる母に思いを寄せ、私は準備に取り掛かった。
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あーちゃん(プロフ) - とりま最高 (2019年10月10日 16時) (レス) id: 578ed0c715 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 愛(サランさん» ありがとうございますm(_ _)m 次回作もお楽しみに…笑。 (2019年3月21日 16時) (レス) id: 6fb3a64d96 (このIDを非表示/違反報告)
愛(サラン(プロフ) - お、おわり、、 めちゃくちゃ面白かったです!ありがとうございました!次もあるなら待ってます!お疲れ様でした (2019年3月21日 14時) (レス) id: bbbfbb5774 (このIDを非表示/違反報告)
つき - 凄い面白いです!更新頑張って下さい! (2018年12月17日 15時) (レス) id: e9fb8ac079 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ちあさん» ありがとうございます。頑張ります♪ (2018年12月6日 14時) (レス) id: 62b0c80745 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2018年9月14日 15時