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久しぶりの集まりだったことから、会議後の懇親会も話に花を咲かせた。

いつも葉月を贔屓にしてくれる方々から労いの言葉をかけられたりと、少し強張っていた気持ちがほぐされた。

皆、私とキム社長が会わないように気を使ってくれて、その心遣いをありがたく感じた。



「さて皆様。宴もたけなわでございますが、本日はこれでお開きとさせていただきます」

幹事の若い青年の声かけに、皆一斉に乾杯をしてぞろぞろと会場を後にした。

二次会もあるらしいが、早く帰らなくては。



『早く帰って来てね』

旅館を出る前、まるで子犬のような瞳で見つめてきた彼が愛しくて、私は緩む口元を引き締めて家路を急いだ。






「Aさん。」

背後から聞こえた声に、私はピタリと足を止めた。

「これはキム社長。先程はお疲れ様でした。」

相変わらず涼しい笑みを浮かべる彼に対し、私は当たり障りのない挨拶をした。

「いえいえ、Aさんの方こそ。帰る前に少し話をしたいのですが…」

「今日はお疲れでしょうし、後日こちらから連絡致しますね」

キム社長の声を遮るようにして答えた私は、軽く会釈をしてその場を離れようとした。




「お母様、◯◯総合病院に入院されているそうですね。」

彼の言葉に目を見開いた。

「…脅しですか」

「いやいや、そんな大それたことじゃないですよ。ただ純粋にお母様のことが心配でして」

言葉とは裏腹に冷ややかな笑みを浮かべたキム社長に、私は怒りが込み上げてきた。

「いやだな、そんなに敵意剥き出しでは足元を掬われますよ。」

「それで、要件は何ですか」

早くこの場柄立ち去りたい、その一心で私は彼を睨んだ。


「山仙を辞めることになりました。」

「え…」

予想外の発言に、私は言葉を詰まらせた。

「この事業に飽きたのが半分と、新事業開拓へのお誘いがありまして。」

「そうでしたか。わざわざご報告いただきありがとうございます。」

キム社長の後任は、山仙の取締役でもあり水安保でも信頼の厚いチャン氏が引き継ぐこととなったそうだ。

これでようやくこの水安保にも平和が訪れるのかと安心した。



「本当に、あなたは手強い人だ。」

キム社長はゆっくりと私の元へ歩み寄った。

「葉月の所有する土地を手に入れれば、もっと良い成果が得られたのに」

彼の手がゆっくりと、私の首元へ伸びる。


「そのネックレス、とても素敵ですね」

「…っ、」

首元の輝きが目の前に散りばめられ、暗闇へと消えた。

「あなたには、不釣り合いだ。」

彼は口はしに冷酷な笑みを浮かべ、「さようなら」と言葉を残し去って行った。

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あーちゃん(プロフ) - とりま最高 (2019年10月10日 16時) (レス) id: 578ed0c715 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 愛(サランさん» ありがとうございますm(_ _)m 次回作もお楽しみに…笑。 (2019年3月21日 16時) (レス) id: 6fb3a64d96 (このIDを非表示/違反報告)
愛(サラン(プロフ) - お、おわり、、 めちゃくちゃ面白かったです!ありがとうございました!次もあるなら待ってます!お疲れ様でした (2019年3月21日 14時) (レス) id: bbbfbb5774 (このIDを非表示/違反報告)
つき - 凄い面白いです!更新頑張って下さい! (2018年12月17日 15時) (レス) id: e9fb8ac079 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ちあさん» ありがとうございます。頑張ります♪ (2018年12月6日 14時) (レス) id: 62b0c80745 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2018年9月14日 15時

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