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彼らが旅館を去ってから、早くも1ヶ月が経とうとしていた。
9月も終わりに近づき、水安保の山々は所々赤く色づき秋の兆しが漂い始めていた。
韓国ではお盆の時期ともあって、旅館葉月も盆休みとなっている。
レンやハンさん達は、お盆の準備で忙しそうにしていた。
日本人の私にはあまりよくわからない韓国のお盆であるが、この時だけはゆっくりと自分の時間を過ごすことができるので嬉しかった。
普段あまり行けない、母の元へ見舞いに行きながらソウル韓国でもしようかと思い荷造りをしていた時、側に置いてあったスマホが振動した。
「あ、ジョングクからだ」
いつもは夜に連絡をくれる彼。
カトクの使い方がわからなかった私も、ジョングクがよく連絡をくれるお陰でようやく慣れるようになった。
いつも夜に少し電話したりしているので、こんな朝早い時間に連絡が来るのは珍しいと思いながら電話を取った。
JK「おはよう、A。よかった、電話出てくれて」
「おはよう、ジョングク。どうしたの?」
『おはよう』という言葉を彼と交わすのがなんだか新鮮で、朝から幸せな気持ちになった。
JK「いや、今から収録があって、その前にAの声を聞きたいと思って…Aはどこか行くの?」
ジョングクは、自分の気持ちをすごくストレートに言う人だ。
思い返したらきりがないが、言われる度に私は嬉しくて照れてしまう。
私から言うのは、なんだか恥ずかしくてせいぜい「会いたい」とか「恋しい」くらい。
好きって言葉は、彼と最後に会ったあの日に言っただけ。
スマホ越しだと口が、指が躊躇してしまう。
いつか、愛想を尽かされないか心配だけど…
「今日から旅館もお盆やすみなの。私はお母さんのお見舞いに行って、少しソウル観光するよ」
JK「え!Aこっちにくるの?!会いたい。夜、空いてる?」
夕方にはロケが終わるらしく、電話越しでもジョングクが喜んでいるのがわかって、私は少し申し訳なくなった。
「私も会いたいんだけど、17時のバスで帰らないといけなくて…旅館を空けるのが心配で…」
JK「そっか、残念だけど仕方ないね。かわりに、写真送ってよ、Aの。Aがソウルにいるってことを感じたい。」
彼は、まるで歌詞のワンフレーズのような言葉を使う。
よく通る低い声が、電話越しでも耳に心地よく響く。
「うん。楽しみにしててね」
ジョングクの、少し照れたような笑顔が見えたような気がした。
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あーちゃん(プロフ) - とりま最高 (2019年10月10日 16時) (レス) id: 578ed0c715 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 愛(サランさん» ありがとうございますm(_ _)m 次回作もお楽しみに…笑。 (2019年3月21日 16時) (レス) id: 6fb3a64d96 (このIDを非表示/違反報告)
愛(サラン(プロフ) - お、おわり、、 めちゃくちゃ面白かったです!ありがとうございました!次もあるなら待ってます!お疲れ様でした (2019年3月21日 14時) (レス) id: bbbfbb5774 (このIDを非表示/違反報告)
つき - 凄い面白いです!更新頑張って下さい! (2018年12月17日 15時) (レス) id: e9fb8ac079 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ちあさん» ありがとうございます。頑張ります♪ (2018年12月6日 14時) (レス) id: 62b0c80745 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2018年9月14日 15時