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「あの人は、山仙の社長なの」
このままの状態で旅館へ戻ったらみんな心配するからと、近くのベンチに腰掛けた彼女は事の次第を少しずつ話し始めた。
山仙ができた当初、当時の社長はAの母と交流を深めていた。
同じ温泉協会員として水安保の自然保護と町の発展に共に貢献していった。
それが変わったのが、山仙の社長が亡くなり後継者としてその息子が社長に就いた後だった。
彼は、周りの旅館を潰すような経営を繰り広げ、今や水安保の絶対的存在となっていた。
その中でAの母は、キム氏の横暴なやり方に屈することなく、この旅館を守り抜いていた。
旅館葉月は、水安保の中でも特に良質な泉質と、自然の美しい景観を魅力としており、キム氏はこの旅館が喉から手が出るほど欲していた。
いくら言い値で買い取るといった提案にも、母は頷くことは決してなかった。
『あなたに、ここの良さは決してわからない。あなたには、ここの美しさを守ることは絶対にできない。なぜなら、ここは、ここを愛してくれる人しか来ることができないのだから』
そう告げたきり、先代の社長から続いていた山仙との交流は断ち切れ、程なくして母は病に倒れた。
その後、高校を卒業したばかりの娘がこの旅館を継いだと聞き、キム氏はあの手この手でAに近づいた。
しかし、Aもまた母親譲りの頑固さでキム氏の要求を飲むことはなかった。
その後、キム氏はAを追い詰めるように各旅行サイトで旅館葉月の悪評を流したのだ。
「今もね、あの人からここを売らないかと言われているの。でも、私はここを絶対に譲るわけにはいかない…命をかけてここを守りたいの」
JK「A…」
彼女を、ここまで苦しめているアイツが俺は許せなかった。
「て言っても、私が頼りないから、ダメなんだろうけどね」
Aは、肩を震わせながら力無く笑った。
JK「A」
俺は、彼女の肩を抱き寄せた。
「まって、ジョングクっ、また泣いちゃうから…」
そう言って離れようとしたAを、俺は何も言わずきつく、離さないとばかりに抱きしめた。
JK「うん、大丈夫だよ。今まで、本当に頑張ったね。」
「ジョン、グク、ーーーっ」
Aは、息を詰まらせながら俺の名前を呼び続けた。
JK「これからは、俺がAを守るよ。」
それは、昔彼女に言ったセリフだった。
ひとりぼっちだったAを守ると言ったのに、子供だった俺は何もできなかった。
もう、二度と彼女の手を離さない。
俺はそう心に決めた。
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あーちゃん(プロフ) - とりま最高 (2019年10月10日 16時) (レス) id: 578ed0c715 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 愛(サランさん» ありがとうございますm(_ _)m 次回作もお楽しみに…笑。 (2019年3月21日 16時) (レス) id: 6fb3a64d96 (このIDを非表示/違反報告)
愛(サラン(プロフ) - お、おわり、、 めちゃくちゃ面白かったです!ありがとうございました!次もあるなら待ってます!お疲れ様でした (2019年3月21日 14時) (レス) id: bbbfbb5774 (このIDを非表示/違反報告)
つき - 凄い面白いです!更新頑張って下さい! (2018年12月17日 15時) (レス) id: e9fb8ac079 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ちあさん» ありがとうございます。頑張ります♪ (2018年12月6日 14時) (レス) id: 62b0c80745 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2018年9月14日 15時