猫かぶりの裏の顔4【奈良坂透】

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風間さんが面会に来てから数日後、ある程度状況が落ち着いたのか透が面会に来た。


｢大丈夫、じゃないよな。辛いだろう｣

｢もう慣れてきたから｣

やはり私の変わり様に驚いた様子。しかし、嫌な顔ひとつせず、前のように相手をしてくれる。
本当は回復するまで顔を合わせたくなかったが、それだといつになるか分からないので結果的によかったのかもしれない。

体調について話すと面倒なことになりそうなので伝えないでおく。


｢今ならいくらでも運べそうだ｣

冗談めいてそう口に出される。運ばれるのは勘弁していただきたい。

｢太れって言われたのにね｣

私の細い手首をを割れ物を扱うように触る。透の手ならすっぽりと一周掴めてしまう。

｢玲は？大丈夫？｣

もう一人の幼馴染の顔を思い浮かべる。病弱な彼女はこんな事態になってもちゃんと過ごせてるだろうか。

｢大丈夫。今日もここに来るって言った時に着いてきそうだったか止めてきた。｣

想像してふふっ、と笑ってしまった。
なんだか久しぶりに穏やかな気分だ。
秒は気からというが、それは本当かもしれない。少し身体が軽くなり自然と前のように笑えている。

｢そう。元気だって伝えておいて。心配かけたら倒れるかも｣

｢分かった｣

不服そうに頷く。嘘をつかせるのは心苦しい。いずれバレるだろうが、その時はその時だ。

｢そうだ。実は…｣

ちょうど話が区切れそうなので話題を変える。この前の風間さんの提案を相談することにした。

相手は異性で歳上。両親と知り合いで、兄を亡くしていること。
一見、普通の人だが今の自分はかなり臆病で疑り深い兎のようになっている。

透もまた悩む素振りを見せた。

｢最近悪い人にしか会ってなかったから迷ってるの。全部が作り笑いにしか見えなくて。
最近はあまりないけど、ここに来て一週間は酷かった。｣

それは私だけではないと聞く。そういった犯罪がこのような災害時に起きるなど信じられない。

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