もう1人のマイキー【東卍】

36話 Little boy ページ39

2年前の光景が再放送のように流れる。忘れない、否忘れてはいけない記憶。ゆっくりと立ち上がり、一歩ずつ足を前に進める。千冬は制止の声をかけるがAは聞く耳持たず足を動かす。左腹をおさえる手は真っ赤に染まり、どんどん生気が失われているのがわかる。周りは真っ赤な道を作りながらも足を止めないAから、目が離せなくなっていた。そのざわつきに、マイキー達に目を向けていた場地も気付く。



場「ッA！何やってんだオマエ！！」


『圭介……』



Aの両肩を掴み、これ以上は行かせないと目で訴える。だが、こんな緊迫した状況にも関わらずAは静かに微笑み、オレに任せろと言うとそのまままた歩を進め、マイキー達の前で足を止めた。万次郎、と声をかけるが目の前の一虎を殴る手を止めないマイキー。Aはすぅ…と息を吸い、勢いよく吐き出した。



『万次郎！！！！！』



大声を出したせいで、ズキリと傷が痛むのと同時にマイキーの手が止まり目が合う。誰が声をかけても止まらなかった無敵のマイキーの手が止まったことにより、周りがどよめく。Aは、マイキーと同じ目線に立ち、そして抱きしめた。



マ「A…」


『オレは死なないよ。シンイチローと約束したから』


マ「兄貴と、約束…」


『オレの為に怒ってくれてありがとう』



精一杯の笑顔でそういえば、マイキーの肩の力が少し抜ける。そしてオレが今日本当に助けたかった人。それは…



『……一虎』



名前を言えば、ゆらりと立ち上がる一虎。その目は、少し前に会った時に見た復讐に囚われた目ではなく、ただの子供のような目をしていた。それにあわせAも一虎と向き合う。



一「…懲りねー奴だなA、またオレに刺されに来たの？今度こそ楽に死なせてやるよ」


マ「あ？てめぇ『やめろ万次郎』…」


『…一虎、ごめんな』


一「は……？」



予想外の言葉に、目を丸くする一虎。それはマイキーや場地達も同じで、2人のことをよく知っている面々は驚いた表情になる



『2年前、オマエのこと一方的に殴ってごめん。オレ気付いたんだ。あん時、オマエは圭介を助けるために兄貴を殴ったんだって。本当だったら見捨てて逃げれたのに。オマエは、仲間を見捨てなかった』


一「！……ッ」



『あのバイクも、万次郎にプレゼントする為に盗もうとしたんだよな。盗むっていう選択肢は悪い事だ。だけど、オレの片割れの事を想ってくれてありがとう』



一「ッやめろ！！」

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