もう1人のマイキー【東卍】

35話 want to help ページ38

痛い。今にも意識が飛びそうなほどに。刺された左腹が尋常ではない熱さを持ち、じくじくと痛むのを堪えるためぐっと下唇を噛み締める。でも、最悪の未来は防げた。心配そうにこちらを見る圭介に悟られないように、精一杯いつも通りに言葉を返す。多分顔には出ていないはず。



『(オマエはオマエの使命を全うしろ)』



痛みによる生理的な涙と冷や汗が勝手に滲み出るのを見られないよう、場地の横へ並ぶ。



『で、なに？コイツらぶっ飛ばせばいーの？』


場「ア？オマエには関係ねーだろが」


『多くのした方が好きなもん奢りな』


場「！…上等だばかやろー！」



行くぞ！とAが掛け声をし、地面を蹴り上げようとした瞬間首に激痛が走る。この状況でオレを殴れる場所にいるのはただ1人。



『ッ……！？』



落ちていく視界にうつったのは、酷く辛そうな表情をした幼なじみ。その姿を最後にAは意識を手放す。



タ「Aくん！！」



意識を手放したAを、場地は優しく受け止める。先程よりも青白い顔をしたAに舌打ちをする場地。



場「…タケミチ」


タ「！ッハイ！！」


場「オマエが昨日、Aのこと気にかけろっつった理由がもしこの事なんだとしたら、聞きたいことは山ほどある。だけど今はこれだけ言っとく…ありがとな」


タ「場地くん…」


場「千冬ぅ、Aを頼んだ」



胸に抱いたAを千冬に託し、場地は目の前の敵へと目を向ける。



場「(オマエがオレの一発で意識手放すなんてありねーんだよ…起きたらぜってー一発殴ってやるから、死ぬなよA)」




＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿


…誰かが泣いてる…誰だ…？聞き覚えのある声。アァそうだ、オレはこの声をよく知っている。オレが今、一番救わなきゃいけない奴の声…



『……ッ！』



ハッと目を覚ますと、まず視界に入ってきたのは千冬。途端刺された腹の事を思い出し鈍い痛みに思わず顔が歪む。今はどういう状況なんだ…？とうまく動かない身体に苛立ち、唯一動く目をキョロキョロと彷徨わせる。



場「やめろマイキー！！」



場地の悲痛な叫びが耳に入る。嫌な予感がAの脳内をよぎり、精一杯の力を込めてぐっと上半身に力を込めれば、それに気付いた千冬がオレの名前を呼ぶ。声のする方へ目を向ければ、それは最悪の状況だった。血まみれのマイキーと、そのマイキーに馬乗りにされ顔面を殴られている一虎。




『(あれは、2年前のオレだ…)』

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