もう1人のマイキー【東卍】

33話 東京卍會vs芭流覇羅 ページ36

車のゴミ捨て場、とでも例えられそうな場所には大勢の人が集まっていた。所謂ギャラリーと思われる人たちを囲むように、中央で屯しているのは背中に東京卍會と書かれたチームと、首のない天使が描かれた服を纏うのは芭流覇羅チーム。そう、今日10月31日は、東京卍會vs芭流芭羅決戦の日。だがその開幕は仕切りである阪泉を一虎が殴り、混戦状態で開幕することとなった。
そんな中、ひとり物陰からこちらを伺う人物。肩より少し長い黒髪をハーフアップにした男。



『ごめんなタケミっち。その約束は守れねぇ』



佐野万次郎の双子であるAは、ある男からの告げ口を思い出す。



“裏切り者だと気付いた羽宮一虎が、場地圭介を粛清するつもりだ”



もちろんデタラメかもしれない。根拠もない。だが、胸のわだかまりが消えない。不良でもなんでもないAは、この状況をどう打破していいかわからず辺りを見回す。しかし、なにせこの人数。場地どころか一虎も見当たらない。きょろきょろと辺りを見回していると、Aの肩を何者かが引っ張ってきた。咄嗟に振り払おうと振り向きざま拳を握りしめた瞬間、オレです！！とかけられた声に見覚えがあり、拳をそのままに振り返る。そこにいたのは、絹のような細い金髪を伸ばし、東京卍會の特攻服を見に纏った男。



「オレです首領！！」


『春千夜…？』



マスクをしていても三途の焦りぶりがわかる。それはもちろん当たり前で、ただの一般人であるAがこんな所にいるのは異常な事なのだ。とりあえず此方へ…！と端の方へと誘導される。



春「〜〜ッあんた、なんでこんな所にいるんですか！？」


『春千夜、圭介どこだ？』



圭介…？あぁもしかして壱番隊隊長のですか？と一瞬置いて、お目当ての人物を思い浮かべる三途。が、すぐにじゃなくて！と焦った顔つきに戻る。



春「此処が何処か分かってるんですか！？不良でも何でもない首領がこんな所にいたら、あのドブどもに目をつけられるに決まってる…！」


『説教なら後で聞く。圭介…それか、一虎はどこだ』




Aの鋭い瞳に気圧され、息を呑む。信頼する王の頼みを二度も跳ね除ける事は、三途には無理だった。「確か…」と口を紡ごうとした刹那、タケミチの場地を呼ぶ声が耳に入る。ここから少し離れた場所に、場地が立っているのを確認したAは、三途の引き止める声を無視し、一直線に走る。



『ッ間に合え…！』

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