もう1人のマイキー【東卍】

17話 最高のダチ！ ページ19

医「手術は無事成功です」



その言葉に全員の顔が晴れる。大きく雄叫びを上げ、喜ぶタケミチに「うっせーよオマエ」と言いながらも目元の涙を拭う三ツ谷。Aも緊張の糸が解けたように、椅子へともたれかかる。



『よかった……ケンチン』



ほっと息をはいたのと同時にずっと繋いでいたままの左手をぐい、と引かれ流れるまま立ち上がる。そしてそのまますたすたと歩き出すマイキー。Aは驚いたものの、そのまま言う通りに着いていく。病院内の中にある外通路あたり、人気のない場所に来ると、パッと繋いでいた左手が解放される。当の本人は背を此方に向けたまま、何も言わない。だが後ろからでも分かるのは、その震える肩。それを見てAはそのまま両手を広げた。



『来い、万次郎！』


マ「ｯ……！！」



振り返り、そのままAに抱きついてくるマイキー。マイキーは基本人に弱みを見せない。だが、Aにだけは違う。彼らは2人で1人なのだ。他人にはわからない見えない境界線が2人にはある。Aが回す腕にも力がこもる。



マ「ｯケンチン…心配かけさせやがって…」


『ホントだよ…退院したら怪我したところ思いっきり殴ってやろーぜ』


マ「ははっ、乗った…！」



重かった空気が段々と和やかになってくる。途中、心配になって向かってきたタケミチと目が合うが、口もとに人差し指を当てるとタケミチも察し、ぺこりと頭を下げその場を去っていった。こうして、8月3日の大抗争は死者を出す事なく、幕を閉じた。




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数日後、病室。


『ケンチン！りんご持ってきた！むいて！』


ド「はあ？」



ウサギの形じゃねーとオレ食わねーから！と来客用の椅子に座るA。何しにきたんだコイツ…と内心思いながらも逆らうと余計面倒くさいので言われた通りりんごを剥き始めるドラケン。エマが見たら鬼のように怒ってくるだろう。部屋にはしゃりしゃりとりんごを剥く音だけが響き渡る。するとドラケンは徐ろにAの名前を呼ぶ。



ド「ありがとな、」


『礼ならタケミっちに言えよ。オレは何もしてない』


ド「ふっ…お前とダチんなれて良かったわ」



その言葉にAも少し照れ臭そうに笑みをこぼす。



『ケガ治ったらさ、また銭湯行こうぜ』


ド「いいな！」



にかっと笑うドラケンにつられてAも笑う。窓から見える空は、あの日とは違う雲ひとつない青空が広がっていた。




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83抗争これにて完！

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