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そんな生活が3ヶ月ほど続いたある日、仕事から帰ると、いつもは玄関まで出迎えてくれる彼女が今日は来なかった。
おかしい。
眠っているだけ?
色々考えをめぐらせながらリビングに入ると、彼女はベビーベッドのそばで何かしているようだった。
「沙耶?ただいまー...って、沙耶!何してんだよ!」
彼女は、蓮の首を締めていたんだ。
「やめて離して!!もう終わりにするの!!」
「やめろ、沙耶!!」
いくら大人とはいえこっちは男だ。
彼女は俺の力に勝てるはずもなく蓮から手を離した。
「き、救急車...!」
彼女を押えながらなんとか救急に連絡を取って、蓮は病院へ運ばれた。救急車へは誰かが乗らなければならないみたいで、彼女を1人にはしたくなかったが、俺が乗り込んだ。
涼太に彼女を頼んだと連絡して、病院名も伝えておいた。
「見たところ異常はなさそうですから、あまり心配なさらないでください」
救急隊員の人が俺の背中を擦りながら、そう口にする。けれど、俺には彼女が蓮を殺そうとするあの光景が、脳裏に強く焼き付いていた。
怖い。
もし俺が少しでも帰るのが遅かったら?
もしあのまま蓮が亡くなっていたら?
そう考えると、怖くて震えが止まらなかった。
病院に運ばれてからも、処置を終えて蓮を返された時も、どこかぼーっとしていてどうやって帰ったのかも正直覚えていない。
家に帰ると、リビングのテーブルに置き手紙があった。
『沙耶ちゃんはうちで落ち着かせてるから大丈夫』
涼太の字だ。
落ち着いたら連絡してくれ、とも。
俺は蓮を抱いたまま、リビングのド真ん中に崩れ落ちた。
「っ...ごめ、ごめんっ...蓮、ごめん...!」
なんの罪もないこの子を、彼女は殺めようとした。
その事実が、余計に俺を苦しくさせた。
「翔太。」
「っ、りょ、た...」
「そんなとこで座り込んでないで。蓮の身体冷えちゃうよ。
...それに、翔太は痩せすぎ。ろくに食べてないし寝てもないんでしょ、そんなんじゃいつ倒れてもおかしくない。」
「や、でも、俺は、」
「ねえ翔太。
...翔太と蓮にとっての幸せは、本当に一つだけなの?
蓮を守る方法は、本当に翔太が身を削ることだけなの?」
涼太にそう言われた2日後、俺は沙耶に、離婚届を渡した。
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こーちゃん(プロフ) - わたがしさん» こちらこそお読み頂きありがとうございます!大変遅くなってしまいすみません、、、楽しんでいただけていれば幸いです! (2023年1月2日 9時) (レス) id: d698c39c36 (このIDを非表示/違反報告)
わたがし(プロフ) - リクエスト、書いていただきありがとうございました!蓮くんが終始可愛かったです! (2023年1月1日 20時) (レス) @page41 id: 4da5866121 (このIDを非表示/違反報告)
すっち - 保育園から友達に手を出したと呼び出しが。相手の親にも責められ、翔太くんは謝るように促すが頑なに謝らない蓮くん。しかし家に帰って話を聞くと、大事な友達であるラウちゃんが悪口を言われているのをみて助けたかったからやってしまった…というお話が読みたいです! (2022年11月8日 1時) (レス) @page33 id: f1612d84db (このIDを非表示/違反報告)
わたがし(プロフ) - 翔太君が仕事も育児も忙しくて、自分に余裕がなくなり、自宅で熱を出して倒れてしまうお話が読みたいです。蓮くんが倒れた翔太君を見て、頑張って舘さんに電話をして助けてあげるみたいな描写があると嬉しいです! (2022年10月22日 21時) (レス) id: 4da5866121 (このIDを非表示/違反報告)
こーちゃん(プロフ) - しろさん» リクエスト&お読み頂きありがとうございます!!これからも面白いお話書けるように頑張らせていただきます! (2022年10月11日 0時) (レス) id: d698c39c36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こーちゃん | 作成日時:2022年9月26日 22時