なにげない ページ14
side青
突然ではあるが、俺にとって蓮は言うまでもなく宝物。
命をかけてでも、いや、命よりも守りたい大切な存在。
だけど、守られているのは俺の方だな、なんて思わされることがある。
これはその一例。
ある時、俺は仕事のことで大変頭を悩ませていたわけで。
何故かと言うと、まあ、取引先に大失態を犯してしまったんだよね。
と、言うのも、その相手方との会議の時に、出されたコーヒーを思いっ切り零して、しかもそれが取引先のお偉い様に思いっっっ切りぶっかけた。
相手はすごく優しい方で、「わざとじゃないのは分かってますから、大丈夫ですよ」なんて許してくれた。
けど、まあ、ね。
さすがにやっちまったなって思うじゃん。
後で先輩にもぶち怒られたし。
「何やってんだ！！」って。
もうトラウマレベルで落ち込んじゃってさ、自分のそそっかしい性格が嫌になって。
保育園に迎えに行く時も、家へ帰るまでも、家に着いてからも、なんとなくそれを引き摺ったままで。
その日は涼太がうちに来られないって日だったから、余計独りぼっちに感じちゃったりしてもう最悪。
「しょーたあ、？」
「ん？何？」
「おなか、ぺこぺこちあう？」
「え？」
晩御飯の時、蓮にそう言われて初めて全く箸が進んでいないことに気がついた。
自分が思ってる以上に落ち込んでんだな、俺。
そこからは蓮に心配かけるようじゃだめだ、って、なるべく笑顔で、いつも通り接するように。
そう心がけた。
「れんね、きょうにんじんさんたべれる！」
「え？いつもきらいきらいってしてるのに？」
「うん！れんおにいちゃんだもん」
そう言って蓮は、小さく小さく切ったにんじんをフォークで刺して、ゆっくりと口の中に入れた。
涙目になりながらも、ぎゅっと目を瞑って必死に咀嚼している。
しばらくすると、ごくん、と喉が動いて何も無くなった口の中をあ、と見せてくれた。
「すごいじゃん！にんじん食べるなんて」
「んふふ、えらい？」
「うん、めちゃくちゃ偉いよ。立派なお兄ちゃんだ！」
「やったあ！しょーたも、げんきなった？」
「え？」
はっとした。
蓮はきっと元気がない俺に気付いていて、どうにか俺を元気付けようと苦手なにんじんも頑張って食べてくれたんだ。
その時、言いようのない気持ちが込み上げてきて、思わずぎゅっと蓮を抱きしめた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 485人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こーちゃん(プロフ) - わたがしさん» こちらこそお読み頂きありがとうございます！大変遅くなってしまいすみません、、、楽しんでいただけていれば幸いです！ (2023年1月2日 9時) (
レス) id: d698c39c36 (このIDを非表示/違反報告)
わたがし(プロフ) - リクエスト、書いていただきありがとうございました！蓮くんが終始可愛かったです！ (2023年1月1日 20時) (レス) @page41 id: 4da5866121 (このIDを非表示/違反報告)
すっち - 保育園から友達に手を出したと呼び出しが。相手の親にも責められ、翔太くんは謝るように促すが頑なに謝らない蓮くん。しかし家に帰って話を聞くと、大事な友達であるラウちゃんが悪口を言われているのをみて助けたかったからやってしまった…というお話が読みたいです！ (2022年11月8日 1時) (レス) @page33 id: f1612d84db (このIDを非表示/違反報告)
わたがし(プロフ) - 翔太君が仕事も育児も忙しくて、自分に余裕がなくなり、自宅で熱を出して倒れてしまうお話が読みたいです。蓮くんが倒れた翔太君を見て、頑張って舘さんに電話をして助けてあげるみたいな描写があると嬉しいです！ (2022年10月22日 21時) (レス) id: 4da5866121 (このIDを非表示/違反報告)
こーちゃん(プロフ) - しろさん» リクエスト&お読み頂きありがとうございます！！これからも面白いお話書けるように頑張らせていただきます！ (2022年10月11日 0時) (レス) id: d698c39c36 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こーちゃん
| 作成日時：2022年9月26日 22時
