Necromance7 ページ7
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「太宰君が知りたがるなんて、随分珍しいね。槍でも降るかな」
「知りたくもなるさ。そして二つ目。一つ目を定義するには、森さんに会ったと云う事が必要不可欠になるだろう。有り得ない。一般人は最上階にさえ行けない筈だ」
太宰は知りたかった。仮に森に会ったとして、何故この男が無事で居るのか。森にとって、太宰は大事な『証人』。つまり、森が藤崎を信用した事になる。何故か。
「何で、って顔してるよ?その顔を絵に描きたい位だけど、生憎俺は描くのが遅いからね」
____真逆。太宰は今、笑っていたのだ。考えている事が相手に伝わらない様に。
当の藤崎はまた、絵描きを再開して居た。
「俺は今大学二年生でさ、臨床心理学と心理学を専攻してる。だから大体判るよ。と云うのは建前だ。俺には視える物がある」
ちらちらと太宰を見ながら、太宰の姿を描いて行く。偶に目が合うと、藤崎はにこりと微笑む。
「森
俺は、後悔の念が強い霊が視える。だから云った。『先代殺したでしょ』って爆笑しながらね。そうしたらこの様だ。生きる為には俺も弱みを教えなくちゃならなかった」
太宰の推測が図星だった。この子供怖いなあ、と内心思いつつ、口にはしない。気を紛らわす様に、目の前の綺麗な少年を描こうとする。
「翔の弱みって、何?」
「そこに来るかあ。一番聞いて欲しく無い所何だけどなあ」
そして一瞬、桜髪の男の鋭い視線が、蛇の様に太宰に絡み付いて捉えた。例えるなら縛り付けられた様な感覚。けれど太宰はその視線に負けず、睨み返す。
「…俺の、一番大事な物だよ」
金色の瞳が閉ざされ、鋭い視線から解放される。同じく太宰も、睨み付ける事を辞めた。
可笑しい。先程から、藤崎の手は一向に進んで居ない。
「一寸。早く描いて終わらせてよ」
____描けないのだ。太宰の顔が。片目が包帯に覆われて居るからでは無い。
太宰の本当の顔が判らない。だから描けない。こんな事は初めてだ。藤崎は瞳孔を震わせ、口角を釣り上げる。
「…いや、はは。まだ描かない」
そうしよう。
これ程までに質の善い画材を、一度で終わらせて仕舞うのは勿体無い。じっくりと描き進めて行こう。この美しく傷だらけの少年を。
「また今度もお願いするよ、太宰君」
「…最悪」
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【要注意人物】
藤崎翔:年齢27歳。身長175cm。体重58kg。彼の詳細を公にすれば、街の均衡が乱れる可能性が大いにある為、詳細は厳重に保管、或いは消去済みである。
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χCielχ(プロフ) - 奏汰さん» ありがとうございます〜〜!!嬉しいです!!!! (2019年7月19日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
奏汰(プロフ) - めちゃくちゃ好きです。 (2019年7月17日 2時) (レス) id: d623967004 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» だめですねぇ笑笑←藤崎の方がいい匂いするらしいです( ˇωˇ )(煙草臭除けば) (2019年6月26日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - χCielχさん» わーい!いい匂いだ〜!素晴らしいなぁ〜!!みたいな感じで天に召されてくれませんかね、幽霊さんたち。……ダメですか?(´・ω・`) (2019年6月11日 0時) (レス) id: d74fa5c180 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» いい匂いになるだけですね!? (2019年6月2日 10時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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