Necromance6 ページ6
____
__
____当時十五歳の太宰と、二十歳の藤崎が…誰の邪魔も受けない、夕陽だけが照らす部屋に居る。
黙々と描き続ける藤崎だったが、ぴたりと止まって筆を置いた。そして、真っ直ぐに太宰を一瞥する。
「何」
少し不機嫌そうな太宰。画材が善い顔をして居ないのは一大事だ。藤崎は間を置いてにこりと笑い、席を立つ。
「座らせてばかりでごめんね、休憩しようか。太宰君、珈琲に砂糖いくつ入れる?」
「…みっつ」
「あぁ、その頭脳でも舌はお子様だね。何か安心したよ」
太宰は藤崎から目を逸らし、「五月蝿いな」と吐く。そんな様子も年相応だと藤崎は笑う。向こうで桜髪の男が珈琲を淹れるのを、太宰はじっと見て居た。
杯に砂糖を三つ入れたのが見えた。あぁ、あれが自分の珈琲かと思う。そう無感情に思ったのも束の間だ。隣の杯にドボドボと角砂糖を…三つ所では無い。いくつだ?今いくつ入れた?と云う程入れた藤崎。
何食わぬ顔で太宰の元へ戻り、角砂糖が三つ入った杯を太宰に渡す。矢張りその砂糖塗れの珈琲は藤崎の珈琲だ。
先程、『舌はお子様だね』何て莫迦にした癖に。
「…翔、砂糖何個入れたの?」
十五歳の太宰が、二十歳の藤崎に向かって『翔』と呼ぶ。何故だか中原と同様、この男に『くん』『さん』付けをしたく無いのだ。
「え。呼び捨て?生意気だね。翔さんって呼びなよ」
「やだ。話を逸らさ無いでくれるかい?砂糖何個入れたの」
へらへらと普段通りに笑って、藤崎は云う。
「一つも入れてないよ、俺大人だもん」
それで発覚した。彼は大嘘吐きだ。実際に砂糖を大量に入れた事を目撃して居なければ気付かない位に上手い嘘。これは、嘘を重ねに重ねた者だけに出来る事。
「…その珈琲、もう見た目が砂糖菓子みたいになってるけど?」
太宰が藤崎の杯を覗き込み、引いた顔をする。
「違う。これは違います。入れたくて入れたんじゃないんだ。
入っちゃったんだ」
「じゃあそう云えば善いじゃない」
「小生意気な餓鬼ぃ」
べ。と舌を出して嫌悪感を表した。太宰は偽りの皮を被った薄笑いを浮かべて、見透かす様に藤崎と瞳を合わせて声を放つ。
「有り得ない事が二つ。一つは、マフィアでも無い翔と僕が、警備も無しに二人切りでこの部屋に居る事。さては首領の弱みを握ったね?同時に君自身の弱みも首領に吐いた。だから此処に居られる。
ねぇ、一体何をしたんだい?」
_
【要注意人物】
藤崎翔:年齢27歳。身長175cm。体重58kg。彼の詳細を公にすれば、街の均衡が乱れる可能性が大いにある為、詳細は厳重に保管、或いは消去済みである。
551人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
χCielχ(プロフ) - 奏汰さん» ありがとうございます〜〜!!嬉しいです!!!! (2019年7月19日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
奏汰(プロフ) - めちゃくちゃ好きです。 (2019年7月17日 2時) (レス) id: d623967004 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» だめですねぇ笑笑←藤崎の方がいい匂いするらしいです( ˇωˇ )(煙草臭除けば) (2019年6月26日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - χCielχさん» わーい!いい匂いだ〜!素晴らしいなぁ〜!!みたいな感じで天に召されてくれませんかね、幽霊さんたち。……ダメですか?(´・ω・`) (2019年6月11日 0時) (レス) id: d74fa5c180 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» いい匂いになるだけですね!? (2019年6月2日 10時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ