Necromance26 ページ26
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藤崎が落ちた。ソファで完全に寝て居る。寝転ぶ藤崎の上に、ラグドールのオサムがちょこんと座って居る。
「起きないねえ」
と、オサムを撫でる太宰。自分と同じ名前と云えども、可愛らしい猫である。藤崎が寝落ちた事を善い事に、太宰は先程の狭い
美術室へ向かう。
気になった絵があった。それは、藤崎が『失敗作』だからと云って掻き集めた中の一枚にあった。掻き集めた後捨てたが、その
一枚だけ棚の裏に隠したのだ。
きっと何かある。
念の為、足音を立てない様にそろ〜と歩く。美術室のノブに手を掛けるが…。鍵が掛かって居る。流石は用心深い『均衡者』。開けられ無いだろう。太宰で無ければ。
懐から針金を取り出し、鍵穴に刺す。非常に巧妙な作りの鍵穴だ。藤崎自身が作り変えたのだろう。
だからこそ怪しい。絶対に開ける。
針金を使って鍵を開けようとする太宰に、白猫が擦り寄る。そうしてにゃあにゃあと鳴く。
「しぃ!静かにオサム!…あぁ、成程。君は翔側って事ね。ならこれなら如何かな?はいマタタビ」
何処からとも無くマタタビを取り出してオサムに与える。所詮は猫だ。オサムはゴロゴロと喉を鳴らしてマタタビに食いついた。
鍵穴と奮闘する事数分。鍵が空いた。
「…流石は翔だよ、時間が掛かった」
ギィ、と音を立ててゆっくり開ける。淡い月明かりだけがその
部屋を照らして居る。電気は付けずに棚の方まで足を運ぶ。棚の裏をひょいっと覗くと、矢張り一枚の絵があった。
奥の方にあって取り辛いが、手を伸ばして手に取る。何故だか
心臓の鼓動が速くなり、恐る恐るその絵を見た。
____月明かりに照らされた絵。
太宰は目を見開いた。その絵は、ある人物の横顔。
「……あ、い」
人物の名前を云いかけたその時。パチンと電気が付いた。流石に驚き、肩を震わせた。振り返るとこそには、案の定藤崎の姿。
「ねえ」
太宰を貫く様に見詰め、藤崎が云う。
「…ごめんね、つい」
「返して下さい」
と藤崎が手を出すので、太宰は絵を渡す。…返して
それはつまり、
「君は誰だい。憑依かな」
「それは…云っちゃ駄目って先生が」
藤崎の中の人物が、「先生」と口にしてハッと口を噤んだ。
仕草的に少女だ。中身が手強い『均衡者』で無いなら…、色々聞き出せそうだ。
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【要注意人物】
藤崎翔:年齢27歳。身長175cm。体重58kg。彼の詳細を公にすれば、街の均衡が乱れる可能性が大いにある為、詳細は厳重に保管、或いは消去済みである。
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χCielχ(プロフ) - 奏汰さん» ありがとうございます〜〜!!嬉しいです!!!! (2019年7月19日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
奏汰(プロフ) - めちゃくちゃ好きです。 (2019年7月17日 2時) (レス) id: d623967004 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» だめですねぇ笑笑←藤崎の方がいい匂いするらしいです( ˇωˇ )(煙草臭除けば) (2019年6月26日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - χCielχさん» わーい!いい匂いだ〜!素晴らしいなぁ〜!!みたいな感じで天に召されてくれませんかね、幽霊さんたち。……ダメですか?(´・ω・`) (2019年6月11日 0時) (レス) id: d74fa5c180 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» いい匂いになるだけですね!? (2019年6月2日 10時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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