Necromance14 ページ14
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午後五時。日が長いこの時期だと、未だ明るい。一仕事終えた
藤崎は一旦探偵社を離れ、街を彷徨った。血に汚れた手袋はきちんと変えて、ある場所を目指す。
毎週月曜。週始めのこの時間に、決まって訪れる場所がある。
____だが、その前に。
「本っ当に怖い!何なのあの子!」
袖口に手を突っ込み、ごそごそと漁って取り出したのは…盗聴器。藤崎に盗聴器を仕掛けられる人物は、太宰位だろう。現に今まで気が付かなかった。
自分が縛った霊が、盗聴器について教えてくれなければ…きっとそのまま一日を過ごして居たであろう。
何時から仕掛けられて居たかと云えば、思い当たるのは海沿いでの相撲の時か。器用な奴だなあ、と藤崎は思う。となるとこの盗聴器は防水?そんな高性能な物があるのか。
何がともあれ、取り外した盗聴器に向かって叫ぶ。
「太宰君のスケベ!!」
盗聴器を落として踏み躙った。信用されて居ないのは知っている。藤崎は『信用してはいけない』人物だ。
「さてと、行くかな」
と、再び歩み進める。今から行くのは行き付けの喫茶処だ。喫煙席のある、喫煙者にとって とても優しい喫茶処。
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入店の音。店の店員が「いらっしゃいませ」と笑顔で藤崎を迎える。
「お客様は何名様でしょうか?」
「あ、待ち合わせです」
女性の店員に手を出して、案内は不要の合図を出す。店員は笑顔で礼をして去って行く。真っ直ぐにテラスへと向かい、きょろきょろと見渡す。
そして待ち合わせの人物を見付け、ぱあっと微笑むと…その席の前で止まった。その人物は読書に集中して居るようで、目の前の藤崎に気が付かない。
否、気付かない振りをして居ると云うのも…有り得る。この男なら。
ひょい、と男が読んで居る本を上から取り上げ、強制的に自身に気付かせる。へらりと笑い、細い指をぱらぱら振る。
「や、一週間振り」
本を取り上げられて、少し不機嫌そうに藤崎を見上げた瞳は…全てを見透かす様な紫色。肩まで伸びた黒髪が、緩やかな風に吹かれ…揺られる。
「同席しても善い?フェージャ君」
フェージャ。彼はフョードル・ドストエフスキー。フョードルと云う名を、親しい仲ではフェージャと愛称で呼ばれる事が多い。
ドストエフスキーは瞬きをし、藤崎をじっと見詰めてから云う。
「あぁ…嫌です」
「わあい!有難う!」
ガタコンと音を立てて椅子に座る藤崎。話を聞け。
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【要注意人物】
藤崎翔:年齢27歳。身長175cm。体重58kg。彼の詳細を公にすれば、街の均衡が乱れる可能性が大いにある為、詳細は厳重に保管、或いは消去済みである。
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χCielχ(プロフ) - 奏汰さん» ありがとうございます〜〜!!嬉しいです!!!! (2019年7月19日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
奏汰(プロフ) - めちゃくちゃ好きです。 (2019年7月17日 2時) (レス) id: d623967004 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» だめですねぇ笑笑←藤崎の方がいい匂いするらしいです( ˇωˇ )(煙草臭除けば) (2019年6月26日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - χCielχさん» わーい!いい匂いだ〜!素晴らしいなぁ〜!!みたいな感じで天に召されてくれませんかね、幽霊さんたち。……ダメですか?(´・ω・`) (2019年6月11日 0時) (レス) id: d74fa5c180 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» いい匂いになるだけですね!? (2019年6月2日 10時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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