▽極上の睡眠を私に。 ページ1
「こらA。はよ起き？」
「ん〜」
優しい声に起こされつつねむねむしていると、
「起きろやぁ！しげちゃんのお通りやでぇぇぇぇえ！」
ばちこーん
後頭部を襲った衝撃に渋々目を開けた。
「今何時ぃ」
「…もう昼休みやで」
白枝A。
趣味は寝ること、特技寝ること。
どうぞよろしくお願いします。
「ノート写させて…」
「授業中起きる努力をせーい！」
「私は神ちゃんとしゃべってるの」
隣の席の神ちゃんは非常に優しい。
見た目は奇抜なのに、お母さんみたい。すき。
今日も私のためにノートをキレイにとってくれる。
私がいなくてもちゃんととるんだろうけど。
「いや、しげが言ってるのももっともやで？ちょっとは授業中起きてや」
「むー」
後頭部の衝撃の原因、しげ。重岡大毅。
うざい人。
私の目覚まし時計(望んではいない)。
家もクラスもお隣さん。
たまにはどっかいっててほしい。
「しげ、うるさい」
「寝起きは不機嫌やなぁ！」
「いっつもうるさいわー。自分のクラスで食べてよ」
「別にAに会いに来てるんちゃうわ！神ちゃんに会いに来てるんや！神ちゃぁ〜」
「しげ、うるさい」
「ぎゃああああああああああああああ」
「寝かせて」
私の安眠は神ちゃんによって守られ、しげによって壊される。
「Aちゃーん！」
あぁ、もうひとり来たよ安眠破壊神。
「今日もかわいー！すきー！」
チャラい後輩、のんちゃん。
気づいたら懐に入られていた。
けど…
「ここ二年の教室…」
「すきー」
「話を聞いてくれぃ」
そんな安眠破壊神ふたりと優しいおかんとお弁当を食べるのが日課。
ほんとは昼休みこそ気持ちよく寝たいんだけどな…。
「あ、バイト入った」
スマホがてぃろん、と通知を鳴らす。
「いつ？」
「明日の放課後ー」
「もう危ないからやめぇ？」
「えー」
過保護な神ちゃんは心配してくるけど、そんな危ないバイトではない。
私のバイトはずばり、『ソフレ』である。
添い寝フレンド。ただお話聞いて添い寝するだけの私にはぴったりのバイトである。
「あ、うちの学校の人みたい」
「「「えぇーーー！？」」」
「誰や誰や」
「Aちゃんと添い寝するんは俺だけでええのー！」
「何年生？」
「…守秘義務」
あーまた三人が騒がしくなってきた。
失敗したなぁ。
なんか自己紹介の真似事みたいなことをして疲れた。
誰に対して自己紹介してたんだろ私。
おなかいっぱいになって眠くなったし、寝よう。
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作者名：ひめりんご | 作成日時：2020年4月30日 0時
