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○以前彼女のことをどこにでもいそうな子だと言ったが、あれは前言撤回。学校で攻略本を読む女子高生なんて初めて見た——。
「Aさんもそのゲームやってるん?」
そう声を掛けた瞬間、彼女が勢い良く振り返った。大きく見開かれた瞳にゾムの姿を映す。
初めて彼女と目が合った。いつも一心に画面を見つめながら輝かせるそれに今自分が映っていると思うと、ゾムは少しばかり嬉しさを感じた。
「え、あっ……」
「俺もそれ前にやってたんや。もうクリアした?」
「へ? あ、えっと、ま、まだ、だけど……」
「お、そうかあ。それで色々喋りたかったんけど、また今度にするわ」
楽しそうに笑いながらゾムは彼女の隣の席に座った。その行動に彼女は戸惑いを隠せず、何故自分の隣にと言いたげな表情で彼を見つめる。
そんな彼女に失礼だと思ったが、その顔があまりにも面白くてつい笑い声を零してしまう。まあ今まで全く接点もなかった奴から声を掛けられたら、そう反応するのは至極当然のことだろう。
「なあなあ、Aさんってやっぱゲーム好きなん? よくあの駅前にあるゲーセンで見掛けるんやけど」
そう質問を投げるとまたも彼女の目が大きく見開き、今度は頬に微かな赤みが差す。彼から視線を逸らした瞳は本を見たり窓を見たりと忙しなく揺れる。
「あっ……う、うん、好き、だけど」
おどおどしながらもぽつぽつと答えていく彼女。その返事にゾムはようやく確証を得られたかのように満足気な笑みを咲かせた。
「そ……そう言う、と、鳥井君も、ゲーム好きなの? よく友達と、遊んでるよね?」
しかし次の瞬間、彼女の口から零れた言葉にゾムはその表情を固まらせた。
「……え、もしかして、気付いてたん?」
そう聞き返せば、こくりと彼女の首が縦に揺れる。その瞬間、何となく恥ずかしくなったゾムの顔が彼女よりも赤くなった。
まさかこちらの存在を認知していたとは思っていなかった。いやしかし、冷静に考えればよく見掛けるのだから相手も気付かない訳がないか。もしかしたらこちらが視線を逸らしている時に、彼女もこちらを見掛けていたかもしれない。思い返せばそんな機会はいくらでもあったはずだ。
そうだったのか。今度はゾムが視線を逸らして頬を掻いた。
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抹茶ちよこ(プロフ) - 瑞稀さん» コメントありがとうございます!面白いと言って頂けてとても嬉しいです!これからもどうぞ温かい目で見てやって下さい。ありがとうございます! (2022年4月17日 12時) (レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - うわぁ〜〜!!本当に面白いです!!まさかのライバル?!誰なんだ…続きも楽しみにしてます! (2022年4月15日 0時) (レス) @page39 id: 503fd2a4ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:抹茶ちよこ | 作成日時:2022年3月14日 15時