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『あ』
「あ」
百合との話が終わった頃合いを踏んで、下に降りた。
百合と遭遇することはなかったが、爆豪と鉢合わせするということは百合は帰ったと言うことだろう。
「テメェ…」
ゆらりと爆豪が顔色を変える。
正直恐ろしさ通り越えて敵顔だ。
『……あ、…の、…ご、ごめ』
その時だった。
ふわっと後ろから抱きしめられたのは。
爆豪の甘い香りがAを包み込む。
優しさに溢れている。
けれどもAは百合に対する罪悪感から逃げようとした。
「哀愁半端ねぇんだよ」
『………爆豪くん、百合は…？』
じたばたとAが逃れようと必死に抵抗する。
爆豪はそれをいとも簡単に押さえつけていた。
やがてAは大人しくなり、Aの頭の上から、爆豪は語りかけた。
「フった」
『じゃあ、百合のところ行かないと…』
「なんでテメェが行くんだよ」
『でも、百合が…」
「百合、百合、百合、百合、うるせぇんだよ」
少し低く感じる彼の声が、耳元に響く。
「てめーなんで俺が呼び出したか分かってんのかよ」
Aは爆豪の視線に気圧されて何も言えなかった。
それを爆豪は分かっていないと判断し、ため息をついて言った。
「てめーといたいから来たんだろうが」
『…………っ…！？』
余裕そうに見える爆豪は耳が赤かった。
「言いにくいって思ったらすぐ相談しろやバカ」
『イダッ！？』
Aはおでこにデコピンをくらう。
頑張って口に出そうとするも嬉しさが邪魔をして上手く言葉が出ない。焦れば焦るほど言葉が詰まる。
『わ、分かった！！！』
「最初っから言っとけ」
夜が終わった。
夜、百合は寝てしまっていて、話を聞くことができなかった。
だから、バスの移動の際、聞く。
つまり、今だ。
『百合、どう、だった…？』
しばらくの沈黙が流れたあと、百合が語る。
「フラれちゃった」
『……そう…』
結果は知っていたから驚かないが、やはり気まずくなる。
「好きって気持ちは消せてない。けど、それを上書きすることならできるから、その上書きが消えても、……大丈夫。
恋したこと、後悔してない。」
『………うん､､そっか…』
「…A、」
『………ん？』
「ありがとう」
百合がいつもの笑みで言った。
ようやくいつもの彼女になったなと思った。
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作者名：おにぎり。
| 作成日時：2021年10月23日 11時
