そして私はまた、最低な朝を迎える (ページ45)

今日:46 hit、昨日:28 hit、合計:95,514 hit

さよならページ45

.

あっという間に長尾くんの異動話は進み、
もう来週には大阪行きが決まった。

納得がいかなかった私は
気付けば部長相手に「こんなのパワハラです！」と声を上げてしまっていた。
同僚ももちろん、駿も驚いていた。
そりゃ１番驚いてるのは私自身なんだから、周りが驚くのも無理はなかった。

取り敢えず落ち着いて、となだめられて
別の部屋に連れていかれてようやく少し冷静になれた。

『どうしたん…？』

「…駿だっておかしいと思わない？社長の勝手で、こんな異動…」

『気持ちは分かるけど…長尾は納得しとるんやろ…？』

「納得いかないって言ってたよ！？」

『‥‥なあ、ほんまにどうしたん？Aがそんな必死になることやないやん…』

「でも…！！！」

駿の言葉と表情を見てハッとした。

「ごめ…っ私おかしいね。ははっ…そうだよね。私には関係ないことか…」

『‥‥』

「いやさ、可愛い後輩、こんな扱いされちゃ…許せな…っ」

『なんで、、、？なんで、泣くん…』

「…っっ」

一度溢れ出してしまったらもう止まらない。
ずっとずっと我慢していたものが全部溢れ出す…

「ごめんっ駿…わたし…」

『……嘘、やろ？』

「ずっと…隠してた…」

『どういう、こと？』

「私…」

『待ってや、そんなん…なんで…』

この時、きっと駿は全部を察したんだろう。
目の揺らぎが止まらず、焦点も合わない

『俺のこと…好きやなかったってこと…？』

「違う…！それは絶対違う。」

『でも、ずっと…隠してたって…』

「駿が大事だった。私が投げやりになりそうだった時、傍に居てくれたのは駿だったから…だから守りたかった、壊したく無かったの…」

そこまで言ったところでようやく目が合う
でも次の瞬間、駿の右目からは悲しいほどに綺麗な涙が流れた——

この1年、
確かに私には蓋をした気持ちがあったけど
駿に対する気持ちに嘘なんて1つもなかった。それははっきり言い切れる。

いつだって優しくて、誠実で。
どんなときも包み込んでくれる温かい人。

でもやっぱり私は最低な奴だったね。
駿から沢山幸せをもらったのに、私は何もできないどころか、貴方を傷付けてしまった…

本当にごめんなさい…

「駿、だいすきだったよ。ありがとう。

ごめんねっ———」

きつく抱き締められた腕を、そっと解く

それは、さよならの合図だった

.