43話 ページ44
道標が口を閉ざした。
和泉守は暫し深い思考の中に沈んでいたが、やがて浮かび上がった。ひらめいた一つの疑問を口に出して道標に問う。
「そういや、大和守から時間遡行軍のヤツを追い出す方法はあるのか?」
「あるよ」
即答だった。
あっさりと、道標は首を縦に振った。
和泉守はその様子に拍子抜けして、道標をまじまじと見つめた。
「なかったら、あんたをここに送り込まないでしょ」
道標が和泉守を見つめ返して眉尻を下げた。
和泉守は「わぁってるよ!」とやけっぱちに声を荒げた。話を変えようと、言葉を並べ立てる。
「どうしたら、時間遡行軍のヤツを追い出せるんだ?」
道標は和泉守への答えを頭の中で考えた後、顔の前で両手を振った。
「……俺は道標だから、道を教えることしかできないんだよね」
途端に、和泉守の肩と目線が下がった。
「……追い出し方は、そっちで考えなよ」
道標は和泉守の周りを一周歩くと、和泉守の肩を叩いた。前方に広がる白い道を指差す。
「ほら、ここからひたすら真っ直ぐに伸びてる道が、あんたの進むべき道だから」
「……そうか」
和泉守はやっと顔を上げた。
白い道を見て息を吐くと、姿勢を正す。
「気をつけなよ。この意識の中はかなり不安定で荒れているからさ」
白い道を歩き始めた和泉守に、道標が声を飛ばした。
立ち止まり、和泉守が振り返る。
「おう! お前もどっかに行くんじゃねえぞ」
応えるように道標が笑みをこぼして、片手を上げた。
「あんたこそ、道に迷ったりしないでよ?」
道標は、和泉守の背中を見送ると、上げていた片腕を下ろした。
「……どこかに行くわけないだろ。俺は道標なんだから」
道標は、和泉守の姿が視界から消え失せると口調を崩し、声の高さを下げて、静かにつぶやいた。
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作者名:うたた寝する三毛猫 | 作成日時:2022年3月9日 11時