検索窓
今日:9 hit、昨日:23 hit、合計:27,773 hit

43話 ページ44

道標が口を閉ざした。
和泉守は暫し深い思考の中に沈んでいたが、やがて浮かび上がった。ひらめいた一つの疑問を口に出して道標に問う。

「そういや、大和守から時間遡行軍のヤツを追い出す方法はあるのか?」

「あるよ」

即答だった。
あっさりと、道標は首を縦に振った。
和泉守はその様子に拍子抜けして、道標をまじまじと見つめた。

「なかったら、あんたをここに送り込まないでしょ」

道標が和泉守を見つめ返して眉尻を下げた。
和泉守は「わぁってるよ!」とやけっぱちに声を荒げた。話を変えようと、言葉を並べ立てる。

「どうしたら、時間遡行軍のヤツを追い出せるんだ?」

道標は和泉守への答えを頭の中で考えた後、顔の前で両手を振った。

「……俺は道標だから、道を教えることしかできないんだよね」

途端に、和泉守の肩と目線が下がった。

「……追い出し方は、そっちで考えなよ」

道標は和泉守の周りを一周歩くと、和泉守の肩を叩いた。前方に広がる白い道を指差す。

「ほら、ここからひたすら真っ直ぐに伸びてる道が、あんたの進むべき道だから」

「……そうか」

和泉守はやっと顔を上げた。
白い道を見て息を吐くと、姿勢を正す。

「気をつけなよ。この意識の中はかなり不安定で荒れているからさ」

白い道を歩き始めた和泉守に、道標が声を飛ばした。
立ち止まり、和泉守が振り返る。

「おう! お前もどっかに行くんじゃねえぞ」

応えるように道標が笑みをこぼして、片手を上げた。

「あんたこそ、道に迷ったりしないでよ?」

道標は、和泉守の背中を見送ると、上げていた片腕を下ろした。


「……どこかに行くわけないだろ。俺は道標なんだから」

道標は、和泉守の姿が視界から消え失せると口調を崩し、声の高さを下げて、静かにつぶやいた。

44話→←42話


ラッキーアイテム

革ベルト

ラッキーカラー

あずきいろ


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (36 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
127人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:うたた寝する三毛猫 | 作成日時:2022年3月9日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。