41話 ページ42
「……こんなところに、何か用?」
人型がゆっくりと振り返った。細くて赤い瞳が細められる。
人型の容姿が和泉守の瞳に映る。驚きで和泉守の息が詰まりかけた。
「加州……?」
和泉守は思わず、ひねりだしたかのような声で人型に尋ねていた。
赤い瞳と襟巻きに、黒いヒールのついたブーツ。
人型の姿は、まさに加州清光の姿を映し取ったかのように瓜二つだった。
「加州? というか、そっちこそ誰なの?」
人型は目をギラつかせて、和泉守を睨みつけた。
「誰ってお前……オレは」
和泉守の口から言葉が出きる前に、人型はため息を吐いた。
「さっきから誰を見て話してるわけ?」
人型は眉毛を迷惑そうに吊り上げた。
「は?」
和泉守も負けじと人型を睨みつける。
「……分かってるよね? 俺は加州じゃない」
人型は眉を下げて息を吐き出した。
その隙に、すかさず和泉守が言葉を投げ込む。
「じゃあお前は一体何だよ?」
「……道標」
人型が言葉を発し終えると同時に、風が和泉守と人型の間をすり抜けていった。
和泉守の髪と人型の髪が、左右に揺れ動く。
人型の耳につけられたダイヤ型のイヤリングも、同時にきらめいて揺れている。
「はぁ?」
そんな中、和泉守の呆れを含んだ声が響いて、空気に溶け込んでいった。
風が静まり返った頃、道標が不満げに口を尖らせた。
「だから、俺が道標なんだけど?」
和泉守はふぅん、と道標を見つめて目を細めた。
「お前が……? ならその姿は何だよ」
道標が自身の体をぐるりと回って見回した。
「これ?」
道標は赤い襟巻きを片手で握りながら、空いた片手で自身を指差すと、不思議そうに首を傾げた。
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作者名:うたた寝する三毛猫 | 作成日時:2022年3月9日 11時