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40話 ページ41

堀川が外を見つめて小さく呟く。

「……それが、食材も食器も本殿の中で」

「そうか……取りにゆくか」

三日月も呟くと、外を見つめた。

「けれど、僕は……」

堀川が悔しそうに外を睨みつけた。

「ああ、そうであったな。ならば俺が行ってこよう」

三日月が堀川の方を見ながら言えば、堀川の丸っこい瞳が輝いた。

「良いんですか?」

「うむ、ちと待っておれ」

三日月は離れを後にした。堀川の目は三日月を追って行った。そうして、三日月の背中が視界から消えるまで見つめ続けた。
堀川は、一息つくと瞼を下ろした。

「兼さん……大丈夫かな」



和泉守は、ふと瞼を開けて辺りを見渡す。

「……ここは、どこだ」

右、左、上。どこを見渡しても、真っ白で模様すらない壁が広がるばかり。
床には、壁と同じ色の廊下が長々と続いている。
終わりがなく変わりもしない景色に、段々と嫌気がさしてきた。

「……くそっ!」

和泉守は、辺り一面を染める白色から逃げ出すように走り出した。
途端に、ぱしゃん、と水たまりを踏みつけたような音が足元から響いた。思わず立ち止まる。
足元を確認しようと目線を下げて、目を見開いた。

「白い、水……?」

和泉守のくるぶし辺りまでが白い水に浸かっていた。その水はゆっくりと水位を上げていく。
和泉守の顔が焦りに染まる。

「まずい!」

和泉守は水の中から力任せに足を引き抜いた。
そのまま、先程よりも早く足を動かす。
背後から迫り来る水音が、和泉守の耳の鼓膜を震わせた。


「はやく……出ていってよ!」
 
水の音に混じって、泣きそうな大和守の声が聞こえたような気がした。


水の音が止んだ。
前方の遥か彼方に太陽が輝いている。

「あれが道標か?」

和泉守は荒い息を整えながら歩き出す。
白い水に浸かっていたはずなのに、不思議とどこも濡れていなかった。


和泉守は、ゆっくりと太陽に近づいた。
太陽は、近づくにつれて人型に姿を変えていった。
人型は、明後日の方向を向いて佇んでいた。

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作者名:うたた寝する三毛猫 | 作成日時:2022年3月9日 11時

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