39話 ページ40
「……三日月さん」
堀川の声で、三日月が再び堀川を見つめた。
思い切りをつけるように、堀川が口を閉じて俯く。
堀川は、すぐに拳を握りしめた後口を開いた。
「どうして、僕を選ばなかったんですか?」
本当に聞きたかったのはこれか。
三日月は胸の内で呟くと、堀川に聞き返した。
「……選ばなかった?」
「ここに残るのは、兼さんではいけなかったんですか」
吐き出された堀川の言葉から、三日月はふと気がついた。
きっとこれが堀川の心からの言葉なんだろう、と。
「不満か?」
三日月がそう尋ねれば、堀川は目を泳がせて言葉を濁した。
「いや、そういうわけじゃ……」
三日月は構わずそのまま言葉を重ねた。
「堀川も主を助けに行きたかったのだろう?」
堀川の瞳を、三日月は覗き込んだ。
堀川の瞳は、三日月の瞳から逃げ出した。
「それは……」
黙り込む堀川に、三日月が微笑む。
「良い良い。俺もそうなのだから、仕方あるまい」
堀川が三日月の瞳をしっかりと捉える。
「三日月さんも?」
三日月は頷くと、堀川を優しさと厳しさの混じった瞳で射抜いた。
「よいか、俺たちには主達を待つという役目がある」
堀川がびっくりして目を丸くした。
「待つ……?」
「そうだ。ときに、堀川よ」
三日月は短い返事を返すと、さっさと話題を変えた。
さすがに眉にしわがよったものの、堀川はしわをすぐに消して三日月に尋ね返す。
「……何ですか?」
「朝餉の用意をしてもらえないか」
堀川はその場で動かなくなったが、頭の中で三日月の言葉を三回ほど繰り返した後、口を動かした。
「朝餉……ですか?」
三日月は堀川の問いに答えるそぶりもなく、次の問いを生み出した。
「主がここへ来てどのくらいだ?」
再び堀川が置物に姿を変えた。だが、それはほんの数秒だった。
うーん、と頭を回転させながらすぐに堀川は三日月の問いに答えた。
「……だいたい、三日くらいですね」
三日月の瞳が鋭さを増した。
「主はその間に何か食べておったか?」
堀川は再び黙り込む。
「……いけない、すっかり忘れてた!」
再び口を開いた堀川は、丁寧な口調を崩していた。余程慌てていたのだろう。
「けど……」
だが、次の瞬間。堀川の口調から慌てていたのが嘘だったかのように勢いが消え失せた。あまりの変わりように三日月が問いかける。
「どうした?」
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作者名:うたた寝する三毛猫 | 作成日時:2022年3月9日 11時