38話 ページ39
「三日月さん、すっかり聞き忘れていたことがあるんですけど」
堀川が三日月を見つめて口を開いた。
三日月が首を傾げて聞き返す。
「ほう、何だ？」
「……兼さん達はどうして刀に？」
堀川が床の一点を見つめる。そこには、三本の刀が転がっていた。
三日月は刀を視界に入れもせずに、短い答えを返した。
「術の反動だ」
堀川は、すかさず追及しようと三日月を見つめ続けた。三日月との視線がかち合うのを視認して口を開いた。
「その術とは、一体……」
堀川が言葉を言い終える前に、三日月が口を動かした。
「和泉守も言っておっただろう。禁術だと」
「どうして禁じられているんですか」
二回目の三日月の短い返答に対して、堀川がすぐさま割り込む。
三日月は言葉を一度は飲み込んだが、再び吐き出した。
「……余りにも危険で扱いにくいからだ」
堀川が眉を顰めて三日月に詰め寄った。
「危険で扱いにくい……兼さん達が居なくなったりしませんよね？」
「本人達次第、といったところだな」
何の感情もなく、淡々と三日月が言葉を難なく選んでは躊躇いもなく吐き出す。
堀川は、口元が引き攣るのを感じながら笑みを浮かべた。
「後は、和泉守達を信じて待つほかあるまい」
三日月は場の空気を変えようとしたのだろう。ふと、静まった空間に言葉を落とした。
堀川も、これに合わせるように三日月に話しかけた。
「そういえば、三日月さんも刀になっていましたよね」
三日月は口を半開きにして固まっていたが、堀川を見つめ直して答えた。
「この術は、掛ける者も霊力をもっていかれるのだ」
「どうやって、すぐに刀から人型に姿を変えたんですか？」
休む間もない。
三日月は、質問を立て続けに飛ばしてくる堀川を横目で睨みつけた。
この睨みは、堀川の笑顔によって弾かれて消え去ったが。
「これだ」
三日月は声に若干の怒りを含みつつ、手のひらくらいの紙を堀川に見せつけた。
「……これってお札、ですよね」
堀川が紙を眺めて、呟いた。
三日月が首を縦に振って頷く。
「うむ、これをこうして巻き付けておく」
三日月が、和泉守が姿を変えた刀の柄に紙を巻きつけていく。
紙の周りから、金色の神々しい光が溢れては光る。霊力だ。
「主さんの霊力がお札から溢れ出てる……」
「これがあれば、和泉守達は人型に戻れるだろう。俺がそうであったようにな」
三日月は刀を床に戻すと、満足げに頷いた。
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作者名：うたた寝する三毛猫 | 作成日時：2022年3月9日 11時
