離れに住む刀剣男士達 (ページ33)

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32話ページ33

「主さん、無事ですか！」

堀川が障子を蹴破った。紙が破られ、裂かれる音が響く。
和泉守が堀川から視線を逸らして息を吐き出した。

「もっと慎重に行けよ……」

部屋へとめり込むような速さで、堀川は部屋の中に突っ込んだ。
和泉守はその後を追い、ゆっくりと部屋の中へと足を踏み入れようとした。だが、部屋の床に足をつける寸前で踏みとどまる。

「……兼さん、助けて」

堀川の吹けば消えてしまいそうな声が、和泉守の鼓膜を震わせた。和泉守は目を見開いて、足を引っ込めた。
和泉守は刀を鞘から取り出した。刀の切っ先かのごとく鋭い瞳を光らせる。

「国広、どこだ」

和泉守は破かれた障子から顔を覗かせた。
部屋の中は、暗い闇で覆い尽くされていた。
和泉守は目を暗闇に慣れさせようと、暗闇を睨み続けた。

「兼さん、ぐっ……」

部屋の左側だろうか。堀川の声が聞こえた。掠れた声は、苦しそうな呻き声によって止められてしまった。まるで息をするのでさえ苦しいように。

「明かりが必要だな、こりゃ……」

和泉守は辺りを見渡した。時間がない。ふと、足元が明るく照らされていると気がついた。

「……そうか、ランプか」

和泉守は、天井付近に取り付けられたランプを取り外す。和泉守の刀の柄と同じ大きさだった。

「待ってろ、国広」

ランプを片手に、部屋へと入り込む。辺りが照らされる。黒いもやのような物が、和泉守に向かって飛んで来た。
和泉守は咄嗟に持っていた刀で、黒いもやを斬り払った。

「びっくりさせんなよ……何だよ、これは」

黒いもやは消えて、跡形もなく消え去った。
和泉守は息を吐く。高ぶる心臓を落ち着けた。気を取り直して、和泉守は辺りを照らした。

和泉守は部屋の左側にランプを向けた。苦しみで顔を歪ませた堀川が目に入る。

「国広！」

和泉守が刀を握りしめる。堀川の首を照らすと、黒いもやが締め付けるようにしがみ付いていた。

「こいつが、国広を……」

堀川が苦しむのはこいつが原因か。和泉守は忌々しげに黒もやに鋭い視線を飛ばす。
ランプを天井に近付ける。黒いもやが縄のように垂れ下がり、堀川の首を締め付けていた。

「あいにくだがな、俺は斬って殺すのはお手のものなんだよ！」

和泉守は天井に垂れ下がる黒い縄目掛けて、刀を一直線に振るった。縄が切れて、黒いもやは姿を消した。