27話 ページ28
「堀川様も怪我を?」
堀川様は、和泉守様を背負っていながらもよろめきはしない。
僕には、堀川様が怪我を負っているようには思えなかった。
堀川様の顔に血がついているのが気にかかるくらいだ。
「少しですけどね」
堀川様は、目を瞬かせてさらりと答えた。
澄ました顔の堀川様に向かって、和泉守様が流し目を向けた。
「少しじゃあねぇだろ。中傷のくせに何言ってんだ」
「けど、兼さんは重傷だよね」
堀川様は少しも動じない。先ほどよりも聞き取りやすい大きな声で、和泉守様に言葉をぶん投げた。
「ぐっ……けどよぉ、いつ悪化するのかわからねぇだろ」
和泉守様は言葉を詰まらせた。
けれど、すぐに堀川様に言葉を投げ返した。
「なら兼さんも同じだよね」
投げ返した言葉は、堀川様によって呆気なく砕かれた。
堀川様と和泉守様は、言い合いを続けている。
まさしく、互いを心配するあまりに起こった言い合いだ。
「お二人とも、手入れを……」
僕は、そんな言い合いを止めようと堀川様達の間に割って入った。
「なら、兼さんを先に」
「いいや、重傷のオレには時間を多く使うから国広からだ」
けれど、僕の言葉はただの火種にしかならなかった。
僕には、だんだんと堀川様達の語気が勢いを増しているように聞こえた。
三日月様は、ことの成り行きを黙って見つめていた。
やがて呆れたように、長い息を吐き出した。
「……手伝い札を使えば良いではないか」
「あっ……そうだった」
堀川様は、罰が悪そうに目線を下に向けた。
隣では和泉守様が、目を堀川様から背けていた。
「ところで主よ、手伝い札の場所を知っておるか」
僕は、三日月様からそう問われた。
先ほどの手入れでは、手伝い札を使わなかった。
首を横に振れば、三日月様は和やかに微笑んだ。
「ふむ……ならば、俺が教えよう」
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作者名:うたた寝する三毛猫 | 作成日時:2022年3月9日 11時