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25話 ※10月9日に内容を変更しました ページ26

「それゆえ、おぬしは手入れ道具を持っておったのだな」

僕が話し終えると、三日月様は納得したように頷いた。

「堀川様がそう勧めてくださったので」

僕たちができるのは、そのくらいですからね!

堀川様は、そう言って僕に眩しいくらいの笑顔を見せたのだ。
その言葉は、僕と堀川様自身の後悔を薙ぎ払うための物に思えた。


「童よ、俺は嬉しいぞ」

僕が話し終えると、三日月様の手は僕の頭を撫でた。
和泉守様の撫で方よりも丁寧で、髪は乱れなかった。

「……三日月様?」

僕は、撫でられるとは思いもしていなかった。
びっくりして三日月様を見つめると、三日月と同じように細められた瞳が僕を見返していた。

「おぬしのような主を、俺たちは待っていた」

僕は、三日月様が発した言葉の意味を飲み込めなかった。
三日月様は、改まった様子で僕を見つめた。
その瞳には、鋭い光が灯っていた。

「童よ……いや、主よ」

僕が固まっていると、三日月様が僕の両手を優しく握りしめた。

「どうか、この本丸を救ってはくれぬか」

三日月様は、そう言うと頭を深く下げた。
僕は、返事をしようとした。だが、口を開く前に踏みとどまった。


「……一つ、尋ねてもいいですか」

この頼みは、二つ返事で了承できない。
慎重にいかなければ。
三日月様は、一泊置いたあとで笑みを浮かべた。

「……よいぞ」

「ありがとうございます」

僕は、三日月様に礼を告げた。
三日月様は口を袖で隠して、僕を見た。

「ふむ、ならば俺も聞いてもよいか」

「……構いませんよ」

三日月様は屈むと、僕に目線を合わせた。
背筋を伸ばし、居住まいを正した。
瞳の中では、三日月が輝いている。

「主よ、なぜここに来たのだ」

「……それは」

僕が言い淀むと、三日月様は眉を下げた。
三日月様の瞳は、僕を伺うように見つめていた。

「……答えなくとも良いぞ」

どうやら、気を遣わせてしまったようだ。
僕は三日月様を見つめ返した。首を横に振って答えた。

「……僕は、ここに放り込まれたのです」

「なんと」

三日月様は目を大きく見張った。
予想通りの反応だった。

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作者名:うたた寝する三毛猫 | 作成日時:2022年3月9日 11時

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