10話 ページ11
「……ねぇ、それよりもさ」
大和守様が、和泉守様と僕の会話を止めるかのように割って入った。
「何でしょう」
和泉守様は、怒った様子も呆れた様子も無かった。
何も言わずに、黙ってしまったのだ。
もしかしたら、予めこうなると和泉守様は予想していたのかもしれない。
堀川様は、先程からずっと黙ったままだ。
和泉守様の隣で、僕達の様子を窺っているようだ。
「さっき主が言ってた、政府がする調査のことなんだけど」
大和守様が、真っ直ぐ僕を見つめた。
和泉守様と堀川様は、僕と大和守様を見守るかのように、遠巻きにして僕達を眺めていた。
堀川様と和泉守様には、僕達の会話に入るつもりが無さそうだと、僕には見受けられた。
「……あいつが追い返してたよ」
「あいつとは?」
「……清光。加州清光のこと」
おかしい。
大和守様が口にした名を始めて知ったなんて。
タブレットに入っていた「刀帳」というアプリで、この本丸に顕現した刀剣男士の名は、一通り見ている筈なのに。
「主、タブレットを見せてくれない?」
大和守様が緊迫した声でそう言った。
僕は言われるがままに、タブレットを大和守様に手渡した。
「どういうこと……」
タブレットの「刀帳」を開いた画面を見て、大和守様が固まった。
堀川様と和泉守様が、即座に走り寄ってきた。
「これは……ちょっと見てみなよ」
堀川様は、大和守様に見せられた画面を食い入るように見つめた。
「兼さん、これって……」
堀川様は顔色を変えると、後ろに立っている和泉守様へとタブレットを手渡した。
「……妙だな」
和泉守様は、画面を見た途端に目を見張った。
しかし、瞬きする間に和泉守様は、眉を顰めると黙り込んでしまった。
どうやら、かなり考え込んでしまったようだ。
「……ねぇ、主」
大和守様は、和泉守様の手に持つタブレットを睨みつけたまま、僕に話しかけた。
「この本丸に来てから、清光に会った?」
僕は何も言えなかった。
大和守様が、タブレットから顔を上げて僕を見た。
大和守様は焦っているのか、瞳が鋭くなった。
僕が目を逸らしても、大和守様からの視線は消えなかった。
「どうなの、主」
大和守様は、僕を急かした。
けれど、僕は答えない。
大和守様の視線はますます鋭くなり、獲物を狙う肉食獣のように見えた。
「落ち着け、大和守」
僕の視界に広がる浅葱色。
和泉守様が、僕を後ろに隠すようにして、大和守様の前へと立っていた。
ラッキーアイテム
革ベルト
ラッキーカラー
あずきいろ
127人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:うたた寝する三毛猫 | 作成日時:2022年3月9日 11時