□あげるものじゃない、貰うものだ ページ8
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おはよーございまーす、と半ば適当な挨拶をして楽屋に入ると、謙ちゃんが寄ってきた。
手をこっちに差し出す。
謙杜「おはよ。はい、バレンタイン」
『え、ないよ。何その手は？』
目の前で「ガーン」と言いながら崩れ落ちる。
流星「なら、それは何？」
『あ、これ？ さっき山田くんから貰った』
駿佑「えっ」
『みっちーのもあるよ』
チョコクランチをみっちーに手渡すと目をキラキラさせた。
…さすが山田くん。みっちーのこんな顔、私じゃ引き出せないわ。
私の後ろでは、ドアをノックされ、流星くんが対応する。
流星「あー、ごめんなさい。そういうのは、ちょっと…」
流星くん、スタッフさんからバレンタインかな？
そう思って振り返ると、スタッフの彼女の目は私に向いていた。
流星「これ、Aにやって」
『えっ、そうなんですか？』
「はい！！」
『あらまぁ、ありがとうございます。いただきます』
流星くんは横から止めるけど、彼女から受け取ったお菓子は、見るからに手作りだし。
ふつーに嬉しい。
謙杜「 “あらまぁ” やって。どこのおばさんやろ」
駿佑「長尾！」
頭を下げる彼女に、「またどこかでご一緒したら、お返しさせてください」と微笑む。
彼女が出て行くと、流星くんが笑い出した。
流星「まーた貰う側なんや」
『手作りとか断れないよね』
謙杜「高校でも、こうやったん？」
私の代わりに、１つ後輩だった流星くんが答える。
流星「男女問わずチョコ貰って、 “お返しは手作り以外で！” って言われてたんよ」
駿佑「その話好き」
『えぇ、みっちーなんで知ってるの』
謙杜「もうその頃から料理できないって知られてたんや」
謙ちゃんの言葉に、調理実習でやらかした思い出が蘇る。
「うん、ね…」と曖昧に返すと
駿佑「ハンバーグ爆発させたって、それ？」
『なんでそんなに沢山知ってるの！！』
情報源は主に流星くんらしい。
『でも、そろそろあげる側になろうかな』
流星「やめとき」
謙杜「死者出る…」
(※ 皆さんも、ハッピーバレンタイン♪)
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作者名：悠希 | 作成日時：2024年2月2日 19時
