僕的生き方

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『…保険ってこと？
この仕事で失敗したときの保険なんて、いらないよ。』


母「保険なんて…。」



もしもこの先この仕事がだめになったとき、手元に残るのは中卒という肩書きだけ。


中卒が社会でどのくらい生きにくい思いをするかなんて、母さんの苦労をそばで見てきたから分かっている。


分かってはいるけれど。


学びたい意欲も希望もない自分がただ大人の言われるがまま進学したところで、そんなの人生の保険だとしか思えない。


中途半端にこの仕事をしているわけじゃない。


母さんのために、応援してくれる人のために、自分は何があってもデビューする、そんな強い覚悟でここにいるつもりだ。


保険なんて、逃げ道作りなんてしないでほしい。


なに、大人は、俺に期待してくれていないの？



母「あのね、期待していないわけじゃない。
大人になるために色んなことを経験して欲しいの。」



経験？


経験なんて、普通の子どもがしていることよりもっと多くの、もっとレアなことをしている。


良いことも悪いことも、心が張り裂ける思いをしたことだって数知れない。


これ以上何を経験すればいいんだ。



『…母さん、学校が嫌いなら無理して行かなくていいって言ってくれたよね？』


母「…そうね、無理して行って欲しくはない。
でも学校と同じようにお仕事も無理して欲しくない。
まだ若いんだから、世界をひとつに絞ることはないんじゃないかなと思っているの。」


『この世界だけに集中しないとだめなんだって！』







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