affection-情愛-3/N ページ45
「大野さん・・・・。」
名前を呼んだオレに、いつも通りの笑顔が降ってくる。
「おはよ、ニノ」
当り前みたいにオレを呼んで
「おはよ」って言葉が降ってくる。
目頭に指を這わせれば
うっすらとぬれていて
「泣いてたな、オレ。」
ってすぐに判った。
でも、大野さんはそのことに一言も触れない。
知っていて気付かないフリをしている。
オレが無駄にプライドが高くて、そういうことに触れられたくないことをこの人はよく知ってるからだ。
座ったまんまの姿勢でお互いにもたれ合いながら、狭くて異常なこの部屋をぐるって見回した。
「昨日は眠くてなんにも考えられなかったけど・・・
やっぱおかしな部屋だな。」
『昨日』って・・・・・
その認識さえも、今は信じていいのかわからない。
一日眠ったのか
それとも数時間だけ眠っていたのか・・・・
時計もなく黄色で埋め尽くされた半畳ほどの狭い部屋は
正常な判断すら、オレ達から奪っていく。
それでもいつも無口なその人は、その先をオレの隣で続けた。
「なんか・・・おかしなことになっちゃったね。」
黄色の壁を見つめたまま、ぽつりと大野さんが呟く。
「ニノが苦しんでるのを見て、なんだかカッとして・・・。
目の奥が痛いって思ったら・・・・、
おかしな力が使えるようになってた・・・。」
「『壊れろ』って思うと、面白いようになんでも壊れていくんだ。
あの時、自分に壊せないものはないって・・・思ってた。」
「力を使うアンタの目は・・・
冬の晴天みたいな綺麗な空色だよ・・・。
その目が空色に染まる時、大野さんから不思議な力が溢れるんだ・・。」
「うん・・・。」
短く答えると、長い繊細な指先がそっと自身の目をなぞるように動く。
そして
「ニノの目も・・・金色に輝いてた。」
「気付いてるだろ?
ニノの本当の力は、人の心が読めることじゃない。
人の思考に入り込んで、思うようにコントロール出来ることだって・・・。」
真っすぐに見つめてオレにそう告げた。
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作者名:あさり | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/a-ground/
作成日時:2012年3月26日 22時