spiral-螺旋-1/J ページ17
リーダーとニノと別れてから、10時間近い時間が流れていた。
リーダーのマンションから飛び出した俺達を追いかけてきた連中をまいた後、俺達は翔さんに言われてすぐに洋服を買い替えた。
キャップやサングラス、眼鏡等も小物類も買って今まで着ていた洋服は、紙袋に入れてゴミ箱に捨てた。
一度だけリーダーから、無事を知らせるメールが東京タワーの写真と一緒に翔さんの携帯に届いたけど、その後はなしのつぶてだ。
心配した相葉さんがリーダーにメールをいれると、なぜか俺達を追いかけるスーツ男達が目の前に現れた。
身を隠して様子を探る俺達に、翔さんが小さな声で囁いた。
「智君に連絡を入れるのはよそう。
どういうからくりか解らないけど、携帯を使うとアイツらにおれ達の居場所がバレる。」
そしてリーダーやニノと連絡がつかないまま、現在に至ると言う訳だ。
俺達は小さな居酒屋に来ていた。
気のいい大将と、ちゃきちゃきの女将さんが仕切っている店には、常連さんらしい客がカラオケを歌い、会社帰りのサラリーマンがカウンターで酒を飲んでいる。
俺達は店の隅にあるテーブル席で、冷酒を少しずつ分け合ってチビチビと飲んでいた。
いつもならこんな飲み方しないけど、さすがに追われる身で酔っぱらうのはまずいからね。
『・・・世界に愛と平和を!!
我々が貴方を神の理想郷にお連れいたします・・・・光の箱舟』
店に置かれた小さなテレビに目を向ければ、最近何かと話題の新興宗教の宣伝が画面を賑わせていた。
「最近よくやってんな、この宣伝。」
俺が箸で揚げ豆腐をつつきながらぼそりと話すと
だぁね〜。って興味なさげに相葉さんが呟いた。
「あぁ、そういやさ、翔ちゃん光の箱舟の取材行ったんだよね?
ZEROで前やってたじゃん。」
相葉さんの言葉に、赤貝の刺身に箸をのばした翔さんが答えた。
「うん、そういやこの間放送したっけね。
相葉君、見たの?」
「うん、見た見た。
でもどういう教団かイマイチわかんなかった。」
「そりゃそうだよな、
行ったおれもよくわかんなかったもん。
なんかさぁ、N県との県境にあるS県の山奥に教団の日本支部があってさ。
信者の人達はアーミッシュみたいな生活してるんだよ。」
とりあえずの話題に相葉さんは目を輝かせた。
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作者名:あさり | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/a-ground/
作成日時:2012年3月26日 22時