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86 - 本編 ページ26

【願い】 五条side 生と死





伊地知からAが特級と会敵したと電話が来た。
僕が相手をしたあの火山頭の呪霊だそうだ。
仕事を全て放り投げ、急いでAの所へ向かった。


五条
「頼むから生きててくれ。」





出来うる限りのスピードで、Aの所へ向かった。
僕の気配を感じたのか、呪霊の気配が急激に遠ざかっているのがわかった。
本当は追って祓ってやりたいが、今は何よりAが優先だ。
Aの気配が感じられない。
頼む…、頼むから生きててくれ。





倒れているAを見て、全てが止まった。


間に合わなかった。


そう思い、一瞬にして血の気が引いた。

彼女の周りにはおびただしい量の赫色。
腹にはナイフが刺さっていて、そこから血が流れ出している。
元々白い肌は、いつもより更に白い。
彼女には赫色も似合うな。なんて、なんとも場違いな事を思った。


五条
「……A。」


やっと捻り出した声。
震える唇で愛おしい人の名前を呼ぶ。

何も反応がない。
死んでしまったのだろうか。
確認しようと手を伸ばしたくとも、体が動かない。

人の死には慣れているつもりだった。

親友だってこの手で殺せたんだ。
だから、大丈夫だ。
実際に任務で人が死ぬのを山ほど見てきた。

だから、生死を確認するのにこんなに恐怖を感じることがなかった。

ただ、ただその場に突っ立って、倒れているAを見下ろしていた。
涙が頬を伝い、零れる。
僕の涙が綺麗なAの顔にポタリと垂れる。
涙なんてとうの昔に枯れたと思っていた。

あぁ、頼む。

頼むから、生きてくれ。

頼むから、いつもみたいに笑って僕の隣にいてくれ。

隣にいてくれるだけでいい。

それ以上はもう求めないから。

ただ、隣に…、

生きていてくれればそれでいいんだ。


五条
「A…。」


君にもう一度だけ、



『あ い た か っ た』



彼女の唇が声もなくゆっくり動いた。

まだ、生きている。

我に返り、急いでAを抱き抱える。
まだAの体はまだほんのり暖かい。
大丈夫、急げばまだ間に合う。





何よりも速く。

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作者名:mito | 作成日時:2021年1月17日 0時

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