86 - 本編 ページ26
【願い】 五条side 生と死
*
伊地知からAが特級と会敵したと電話が来た。
僕が相手をしたあの火山頭の呪霊だそうだ。
仕事を全て放り投げ、急いでAの所へ向かった。
五条
「頼むから生きててくれ。」
*
出来うる限りのスピードで、Aの所へ向かった。
僕の気配を感じたのか、呪霊の気配が急激に遠ざかっているのがわかった。
本当は追って祓ってやりたいが、今は何よりAが優先だ。
Aの気配が感じられない。
頼む…、頼むから生きててくれ。
*
倒れているAを見て、全てが止まった。
間に合わなかった。
そう思い、一瞬にして血の気が引いた。
彼女の周りにはおびただしい量の赫色。
腹にはナイフが刺さっていて、そこから血が流れ出している。
元々白い肌は、いつもより更に白い。
彼女には赫色も似合うな。なんて、なんとも場違いな事を思った。
五条
「……A。」
やっと捻り出した声。
震える唇で愛おしい人の名前を呼ぶ。
何も反応がない。
死んでしまったのだろうか。
確認しようと手を伸ばしたくとも、体が動かない。
人の死には慣れているつもりだった。
親友だってこの手で殺せたんだ。
だから、大丈夫だ。
実際に任務で人が死ぬのを山ほど見てきた。
だから、生死を確認するのにこんなに恐怖を感じることがなかった。
ただ、ただその場に突っ立って、倒れているAを見下ろしていた。
涙が頬を伝い、零れる。
僕の涙が綺麗なAの顔にポタリと垂れる。
涙なんてとうの昔に枯れたと思っていた。
あぁ、頼む。
頼むから、生きてくれ。
頼むから、いつもみたいに笑って僕の隣にいてくれ。
隣にいてくれるだけでいい。
それ以上はもう求めないから。
ただ、隣に…、
生きていてくれればそれでいいんだ。
五条
「A…。」
君にもう一度だけ、
『あ い た か っ た』
彼女の唇が声もなくゆっくり動いた。
まだ、生きている。
我に返り、急いでAを抱き抱える。
まだAの体はまだほんのり暖かい。
大丈夫、急げばまだ間に合う。
*
何よりも速く。
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作者名:mito | 作成日時:2021年1月17日 0時