85 - 本編 ページ25
【VS漏瑚5】 左手の薬指
*
漏瑚
「!!!」
突然、呪霊がもの凄い速さで去っていった。
何故?もう私は虫の息だ。
あと一撃でも入れれば死んだはずなのに。
…なんでもいいや。
その場に倒れ込み、空を見上げる。
夜空には星が輝いている。
いつもなら今頃悟と一緒にご飯を食べたり、ベットで横になって、たわいもない話をしてたはずなんだろうな。
そうだ、刀もナイフも壊れなかったな。良かった。
これなら真希さんに迷惑をかけずに済みそうだ。
でもナイフはちゃんと洗ってもらわないと駄目だな。
私の血がベッタリついている。
これからの事が淡々と頭に浮かぶ。
みんなにたくさん良くして貰ったのに、お礼も何も言えないな。
あ、悟はどうなんだろう。
泣くのかな?怒るかな?
泣いてる顔は、なんだか想像つかないや。
彼からはたくさん、たくさん、色々な思い出を貰った。
私にはもったないぐらいの幸せをくれた。
私を助けてくれた。
私に生きる言葉をくれた。
私を生かしてくれた。
私を強くしてくれた。
私とずっと一緒にいてくれた。
私を好きと言ってくれた。
私は何も、…何も返せなかった。
お礼も何も言えていない。
言葉も気持ちも何も言えてない。
…ずっと、ずっと考えてた。
たぶんこの気持ちがそうなんだ。
直接言う事はきっと叶わないだろうな。
左手の薬指。
着けたまま死んだら…、分かるかな。
分かってもらえるかな、私の気持ち。
*
五条
「……A。」
あぁ、良かった…最後に聞けた。
あの人が私を呼ぶ声だ。
視界がどんどん暗くなっていく。
夜空の星がもう見えない。
五条
「A…。」
A
『会いたかった。』
その言葉が声にできたかどうかわからない。
暗い視界の中で、悟の蒼い眼が光った気がした。
*
悟。
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作者名:mito | 作成日時:2021年1月17日 0時