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85 - 本編 ページ25

【VS漏瑚5】 左手の薬指





漏瑚
「!!!」


突然、呪霊がもの凄い速さで去っていった。

何故?もう私は虫の息だ。
あと一撃でも入れれば死んだはずなのに。
…なんでもいいや。

その場に倒れ込み、空を見上げる。
夜空には星が輝いている。
いつもなら今頃悟と一緒にご飯を食べたり、ベットで横になって、たわいもない話をしてたはずなんだろうな。

そうだ、刀もナイフも壊れなかったな。良かった。
これなら真希さんに迷惑をかけずに済みそうだ。
でもナイフはちゃんと洗ってもらわないと駄目だな。
私の血がベッタリついている。

これからの事が淡々と頭に浮かぶ。

みんなにたくさん良くして貰ったのに、お礼も何も言えないな。

あ、悟はどうなんだろう。
泣くのかな?怒るかな?
泣いてる顔は、なんだか想像つかないや。

彼からはたくさん、たくさん、色々な思い出を貰った。
私にはもったないぐらいの幸せをくれた。

私を助けてくれた。

私に生きる言葉をくれた。

私を生かしてくれた。

私を強くしてくれた。

私とずっと一緒にいてくれた。


私を好きと言ってくれた。


私は何も、…何も返せなかった。
お礼も何も言えていない。
言葉も気持ちも何も言えてない。

…ずっと、ずっと考えてた。

たぶんこの気持ちがそうなんだ。

直接言う事はきっと叶わないだろうな。

左手の薬指。
着けたまま死んだら…、分かるかな。
分かってもらえるかな、私の気持ち。





五条
「……A。」


あぁ、良かった…最後に聞けた。
あの人が私を呼ぶ声だ。

視界がどんどん暗くなっていく。
夜空の星がもう見えない。


五条
「A…。」


A
『会いたかった。』


その言葉が声にできたかどうかわからない。

暗い視界の中で、悟の蒼い眼が光った気がした。





悟。

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作者名:mito | 作成日時:2021年1月17日 0時

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