ただ愛する仲 Ⅱ【Hikaru.I】 (ページ46)

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A side

『…タクシーもあるのに』

握られた手に熱が集中する。
ピコン、というスマホの音に慌てた。

今日の仕事、任せてごめん

律儀に少ししか無かった仕事のお礼。
…彼らしい。

次は一緒に
私たちはチームなんだからね!

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モデルハウス竣工式

建築物が無事に完成したことを関係者に披露し、
協力していただいた方々に感謝の気持ちを捧げる式。

私の作った模型が飾られていた。

〈撤収でーす〉

その声にはっとすると、式は終わっていた。
…模型をぼうっと見すぎた。

辰「ははっ、Aちゃんほんとに模型好きだね」

『あ、…他の人のも見て勉強になるので』

辰「撤収だよ、手伝う」

大きい模型を一緒に車まで運んで
前のように送る、と言われたから代表に甘えることにした。

辰「…昨日、連絡なかったね」

『え、』

辰「待ってたのに〜」

『…遅くに気づいたので朝にしようかと』

辰「気にしなくていいの」

『すいません』

寂しそうな顔をしていたから、少し後悔した。

辰「じゃあ、反省してもらお〜っと」

そして連れてこられたごはん屋さん。
…建物がとてもお洒落で仕組みが気になる。

辰「ふは、座んなよ」

『…こんな所があったんですね』

辰「父さんのお気に入りの場所なんだ〜」

近くに居る老夫婦を見て、微笑ましいと呟く彼。

『そうですね、うらやましい。
　私の親は…別居してるから』

辰「俺も、父さんは他界したんだ」

やはり、人は見た目で判断できない。
こんなにも毎日にこにこ過ごしている人が。

『…代表の手掛ける建物が楽しみです』

辰「うわ、プレッシャー！イマイチなことも多いのに。
　ここに改築工事でも父さんに何度も叱られた、
　 “現場を見ずに数値だけで考えるな”って。」

『あ、お父様も同じ仕事を？』

辰「っ…、飲み終わったから外も見てみる？」

『…？はい、』

改築のおかげでこんなにお洒落に、
しかも彼の手掛けた。

何枚か写真を撮って、大介に送ろうと思う。

『友達に送ってもいいですか？
　漫画家なんですけど、背景に使ってほしくて』

辰「もちろん！」

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