赤いイナズマ/ky ページ10
言われてる意味がわからず混乱した。
「体調……ですか?」
「沙耶から聞いたから」
……あっ、そうだ。
清川先輩に会うのが怖くて避けてた時に体調悪いからと誤魔化したんだった。
私の目線に合わせてしゃがみ込んだ清川先輩は心配そうな瞳で私を見つめていた。
ラリアットされた時も驚いてバクバクしたけどこの心臓の高鳴りは違う意味のものだってよくわかる。
全身に鳴り響いてその振動の大きさで意識せずとも口から気持ちが溢れてしまいそうだ。
いつも言ってるやつじゃなくて、本気だってわかるやつ。
「やだなあ、全然平気ですよ、それに今日は」
まだ追い掛けていたい、好きと零れたらもう追い掛けられない気がして。
気持ちを隠して誕生日のお祝いの言葉だけ貰って幸せのまま今日を終えたい。
だから自分から主張しようとしたそれは清川先輩の言葉で遮られてしまった。
「……誕生日」
「えっ」
何なのその間抜け顔と指摘してきた清川先輩は身体で隠していたのか紙袋を横にスライドさせてきた。
「あんなに毎日聞かれてたら嫌でもわかるわ」
紙袋から出されたのは私がずっと欲しいと言っていた赤いイナズマのピアスだった。
海ちゃんと出掛け先で初めて見掛けて欲しかったけど私はピアスが開いていないから諦めていた。
見掛ける度に「欲しい欲しい」と毎回言う私に海ちゃんが「ピアスくらいなら開けてあげるよ」と言ってくれたけど「え……怖いからやだ」とのやり取り最低でも5回はした。
「非常に申し上げにくいんですけど私ピアスは」
「うるせえ、後ろ向け」
低い声で一蹴されれば反論の余地もなく言われた通り後ろを向くと耳たぶにひんやりとした感触が走った。
でも痛くない。
「はい、出来た」
「これイヤリングですか?」
耳朶を触るとネジのようなもので止められていて聞かずともイヤリングと言うのがわかった。
ガシガシと頭をかいてから清川先輩が私を見た瞬間、予鈴のチャイムが鳴り響いた。
どうしてもその目線を外すことが出来なくて予鈴が鳴ってる間ずっと私と清川先輩は見つめ合ったままだった。
正直、心臓が破裂しそうなくらい鳴り叫んでいてこのまま欲しい言葉を貰えたら本当に零れててしまいそうだった。
「……誕生日おめでとう、A」
「せんぱ、」
好きですと言う私の気持ちは清川先輩の唇によって塞がれて言い出せなかった。
言葉と気持ちが涙となって溢れ出て耳のイナズマが静かに揺れた。
「好きだよ、俺の彼女になってくれる?」
281人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
luco(プロフ) - パンださん» パンだ様、コメントありがとうございます!読者様の楽しみになれて嬉しいです。今後もマイペースになりますが頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (2021年3月30日 2時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
パンだ - めちゃくちゃ面白くて楽しませて貰ってます!更新頑張って下さい! (2021年3月28日 23時) (レス) id: 0ce8abb0bc (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - ららさん» らら様、コメントありがとうございます!lucoを知って頂いた上に全作品お読み頂けて嬉しいしかないです!微微調整しながら今後もマイペースに更新していくのでこれからもよろしくお願いします\(^^)/ (2020年2月23日 1時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
らら - 最近、lucoさんの事を知って今めちゃめちゃハマってます、!!lucoさんが書かれた作品全部読ませて頂きました!!きゅんきゅんして幸せです!笑 これからも頑張ってください!応援してます!! (2020年2月23日 1時) (レス) id: 55f78e88a7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:luco | 作成日時:2020年2月11日 1時