【実l況l者】たとえば自惚れじゃないとして【短編集】

たとえば初カレじゃないとして/ky ページ47

こんな年齢だ。
別にAも俺も初めての彼氏や彼女ではないことくらいわかりきってることだった。
俺だって元カノと比べるなんてくだらねえことしないしAだってそんなことするような女じゃない。

そう、だから過去に嫉妬したって何の意味もない。
きっとレトさんなら「まず嫉妬って怒るってことやろ？怒るなんて生産性ないことすんなや、大人やろ？」と俺を宥めてくれるだろう。

しかぁーし、俺は俺の沸点が低いことを忘れていた。コンビニに堅揚げポテトのブラックペッパー味がないくらいでイラつくような男だ。

それは俺の好奇心から始まった。
今もJKの中では流行ってるプリント倶楽部、通称プリクラ。
俺の学生時代も当時の彼女と撮ったことあるくらいだしその時も女子の中では流行っていた記憶がある。
Aは年齢の割に童顔だし学生の頃のプリクラなんぞがあれば見てみたい。

優しいAは快諾して実家まで帰って当時作っていたと言うプリクラ帳なるものを持ってきてくれた。

実家に置いてくるくらいだし内容も覚えていないのか「わけぇ〜」と笑う俺の隣で「やっぱ恥ずかしいものあるわ……」と一緒にそれを見ていたAは突然光の速さでまだ途中のプリクラ帳勢いよく閉じた。

「何すんだよ」
「恥ずかしいしもう見たでしょ？」
「いや、最後まで見てねーし」

焦ってる様子が目に見えてわかる。
そんなことされると無理矢理にでも見たい好奇心っつーもんが人間誰しも抑えることなんでできないっしょ。

隙を見て奪い取ったページには彼氏らしき男と密着したプリクラが数枚貼られていた。

ご丁寧に「初カレ・初カノ」と言う落書きでいらん情報まで与えてきた。

「あかんあかん、絶対そんなんで怒ったら恥ずかしい奴やで〜」

脳内で茶化してくる鼻声の野郎も俺の心のモヤモヤに拍車をかけてきた。

「俺だって学生の頃、彼女くらいいたしそんな隠すことなくない？」

Aの目を見ずにいることで暴走しそうになる気持ちを抑える。
俺は大人、俺は大人と繰り返すもプリクラ帳を握る指に力が入る。

「それともまだ未練でもあんの？」

即座にないよ！と返事は聞こえたものの頭がおかしくなりそうだった。
俺ってこんなに嫉妬心強いやつだった？
それともこれは独占欲みたいなもんなのかもしんない。

Aがこれまで歩んできた人生の中で俺の知らない軌跡があることが我慢ならない。
そう考えるとしっくり来るのと同時に吐き気を催すほどの独占欲だった。

たとえば初カレじゃないとして/ky→←たとえば物語りじゃないとして/uszw

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す