【実l況l者】たとえば自惚れじゃないとして【短編集】

きみがその本数に気付くまで/rt ページ43

恋人同士、ロマンチックな展開期待していなかったと言えば嘘になる。

「誕生日おめでとさん」
「あ、りがと」

誕生日の前日にお泊まりに誘われて勝負下着まで装備したのにドキドキしていたら隣に横たわる彼氏は瞬時に爆睡してしまい絶望の中枕を濡らしながら眠った。

そして今朝、すっきりした顔で誕生日を祝う言葉を貰った。
知ってたか、私の彼氏を努めているレトルトくん。
私の誕生日は既に7時間弱は経過していること。
驚き過ぎてすんなり感謝の言葉が出ちゃったけど！
私がそのまま目を真ん丸くしてレトさんを見ていると「あれ？仕事行かんの？」などと聞いてきた。

「行くけど！」
「何怒っとんの？」

私はお前の添い寝サービス業やってるわけちゃうねんぞ！と暴言を吐きたい気持ちを抑える。
昨日も仕事、今日も仕事。
それでもその僅かな夜の時間に会える？なんて言われたら期待するじゃん？
そんな言葉Twitterのフォロワーの方がもっと脚色ありで嬉しいこと言ってくれるわ！

「……じゃ、行くから」
「うん、いってらっしゃい」

一応、今日もレトさんの家に帰る予定ではあったけどこの調子じゃ適当な店に連れてかれてご飯食べて解散しそう。
それなら実家に帰って私が好きなおかずばかりが出てくる食卓で楽しく食事したい。

付き合った当初、何が欲しいと聞かれて冗談で薔薇の花束年齢の本数を所望した。
レトさんは「そんな恥ずいのやるわけないやろ」と照れていたから「うそうそ、何でもいいよ」と言ったのに誕生日0:00に薔薇の花束を渡してくれた。

マンネリですか？そうですか？
誕生日はレベイベの準備で忙しそうだっのに無理に会いたい！とわがまま言って自分勝手に盛大にお祝いした罰なの？

1日中、溜息ばかり吐きながら何とか仕事を終えレトルト邸に辿り着いた。

ネガティブになるのは悪い癖だとメンタルゴリラのフォロワーに励まして貰い朝に比べれば機嫌は良かった。
「誕生日おめでとさん」と言ったと言うことは少なくとも誕生日を忘れられてると言うことはない。
そう、記念日とか覚えてない、自分でも口に出して確認するのに3秒後には忘れるレトさんにしては上出来と言うか実はめちゃめちゃ凄いことなのでは！？

鞄の中から貰ったキーケースについた鍵をかざして開いたエントランスに足を踏み入れる。
そう言えばこれも誕生日に貰ったな、私の好きなブランドなんてよく知ってたなと感心したものだ。

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