【実l況l者】たとえば自惚れじゃないとして【短編集】

だから人生は楽しい/rt ページ27

どういう経緯で知ったのか何となく予想はついたけれどAとA子さんは友人だった。
A子さんの性格的に何かきちんとした理由がないとそんな合コンみたいな食事会に来る訳がないらしい。
うっしーの話を誤魔化して話すとAは「そうだね〜、好きなの？じゃあ頑張って応援しちゃお」と張り切ってしまった。

「レトさんのこと彼氏って紹介するからって話ね」
「まあ、そうやけどお前はそれでいいの？」
「何が？振りとか彼氏いないのに虚しくないってこと？」
「そうやけど……そうやなくて……」
「大丈夫！ちゃんと彼女やったんで！」

下手になった関西弁で受話器の向こうのAは楽しそうに笑っていた。

別れた後、レトさんの好きな地雷女みたいな格好した方がいい？とLINEで聞かれ地雷女って何やねんと返すと画像が送られてきた。

「嫌いじゃない」

と、送ったのは別にそういうのが好みって訳やなくてその画像がAだったからって……言い訳しておこう。

Aとは大学の終わりに初めて話した。
確かゼミ関係のアンケートをしなきゃあかんくて手当たり次第に同じ学部の子に声掛けてアンケート用紙を配った時だった。
俺、多分人生であれほどコミュ力バグになることないしもはやその反動でこっち来てからの壁がエベレスト並に高くなったと言っても過言やない。

ほとんどの子はその場で書いて渡してくれたけどAだけは締め切り直前にゼミ室に持ってきてくれた。
その時に大学卒業したら上京する話を友達にしていてたまたま聞いていたAが私も東京で就職するんだ！と言っていて時間合ったら飲んだりしようと連絡を交換したのだった。
それからかなり年月が経ってもAは友達のままで付き合う？って話になったこともあったけど俺が煮え切らない態度を取るせいで結局は関係は変わらなかった。

だからこんなん本当は俺が虚しい。

正直うっしーが羨ましかった。
やってることはどうあれ(と言うかやめろと言ったらわかったと頷いてくれたし)好きな子に対して真っ直ぐだ。
それに本当は真摯で実直だし好かれてるA子さんは幸せやし付き合ったら抱えている(らしい)傷もきっと包み込んでくれるやろう。

対して俺はどうや？
こんな近くにいる好きな子に「好き」の2文字も言えずにこんなとこでずっと足踏みしおって恥ずかしないんか。

☆

結果、その食事会はうっしーの顔を見た瞬間A子さんがもの凄い速度で駆け出し店を出て行ってしまった訳だけど。

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