【実l況l者】たとえば自惚れじゃないとして【短編集】

恋のジレンマ/ky ページ12

スポーツ大会以来、Aに追い掛け回されてから何だかんだ7ヶ月も経過していた。
どこに隠れても見つけ出して擦り寄ってくる。
あの時の遠慮がちな可愛いAはどこ行ったんだよ！と言いたくなるくらい。

正直、沙耶に「友達がキヨさんのこと好きらしいんで仲良くしてあげてもらえませんか？」と言われてめどくさすぎ太郎なんすけど〜？？？と思い「は？やだよ、めんどくさ」と断ったのに沙耶の後ろにいたAさんの表情が不安に満ちていて……絆された。

あと本音を言うと普通に可愛い。
俺は基本動物に愛はねえけど、歳下の女の子に犬みたいに懐かれて悪く思う男なんて絶対いない。
こんな子が妹だったら俺もレトさんみたいになるかもしんねえ。

でもあまりにも過剰でネタみたいにも見えてくる。

この前、なかなか来ねえなと思ってた日にたまたまAが同学年の男と喋ってんの見てそんな奴と喋ってる暇あんなら俺んとこ来いよ！って思ってしまった。

振り回されている。

俺は基本彼女は俺のわがままで振り回して「私がいなきゃだめなんだから」って思われてえはずなのにお前に絆されたせいで「お前は俺じゃなきゃだめなんじゃねえの？！」と言う気持ちにさせられている。

「自分はぶっきらぼうに振る舞うし会いになんて行かないのに他の男と喋ってる暇あんなら会いに来いなんて……愛やね〜」
「うっせえんだよ、ぶっ転がすぞ」
「そやそやもうすぐ誕生日やないの？沙耶がお祝いするんや〜と張り切っとったぞ」

そんなの知ってんだよ、毎日しつこいくらいに聞いてきやがるから言われなくてもわかってる。

「レトさん」
「はい」
「ぶっ転がされたくなかったら沙耶使ってAといつもいる女呼び出せ」

レトさんは「じゃあいつも質問くらい答えてやんな」と言いつつすぐに沙耶に連絡を取ってくれた。

海と書いてかいと読むAとよくつるんでる女は「Aは赤いイナズマのピアスいつも欲しがってるけどピアス穴開いてないし開けたくない〜って言ってますよ」と快く有力情報をくれた。
店を調べるとイヤリングもあるみたいだがどうやら取り寄せだった。
日にち的にギリギリで当日の午前到着だったから当日の午前は学校蹴って受け取りに行った。

その前々日あたりから沙耶に「体調悪いみたいです」と聞いていてその通りでいつも追い掛け回されていたのにAは全然姿見せなかった。

クッソ、調子狂うんだよ。
俺の許可なく体調崩してんじゃねえ。

恋のジレンマ/ky→←恋のジレンマ/ky

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す