【実l況l者】マスターキーなんてありません【ky】

チャンスは逃さないタイプなんで ページ10

夕方くらいの早めの時間にホテルに戻るとちょうどAがチェックインしていた。
給与の良さそうなリーマンの団体だった。
チェックイン時は俺の時もそうだったけど2人しかいないっぽい。
団体だからかふたり掛りでチェックイン対応している。
鍵が受け取れねぇな、と思っていたらAがアイコンタクトしてきた。
やっぱりアイツ仕事出来るな、と思ったけど首を横に振ってロビーを指差して待ってることを伝えた。

ソファに腰掛けると案外ふかふかでちょっといい。
やっぱソファはふかふかに限るな。

「Aちゃん、いくつになったの？全然若いままやん」

突然、関西弁の猫撫で声が聞こえてきた。
関西弁てだけで鼻声が連想される。
ま、あいつはこんな陽キャな声してねえけど。

「そうそう、久しぶりだね、今回も俺の部屋の鍵覚えててくれる？」
「俺も俺も」

あいつら酔ってるリーマンじゃねえよな？
こんなめんどい絡みされてんの？
ここキャバクラじゃねえぞ？
赤の他人から聞いてもうぜぇ絡みにイライラしていたらAのあははと言う笑い声が聞こえてきた。

「お仕事ですからね、覚えますよ、歳は内緒です、いくつに見えますか？」

そこから大喜利みたいな年齢当てが始まって俺は盛大な溜息を吐いた。
だーかーらー、ここはキャバクラじゃねーだろ！
キャバの女が言うような年齢クイズ始めんな！
て言うか俺も年齢聞けてねぇから気になるんだよ！
そこまですんなら当てろよ！リーマン！

「この前、会った時、新卒だったし23か24でしょ？」
「はい、正解〜、こちら鍵と朝食券です」

はい、リーマンさすがだぞ。
歳下確定、それだけでちょっと可愛さ倍増。
だけどな、そこまでだ。

「当てたからチューしてよチュー」と粘ってるリーマンの横に立つと、困り眉をして愛想笑いをしていたAが「あ、お帰りなさいませ、清川様！」とキーボックスにズレた所でそのリーマンは「あとでチューね！」と言ってエレベーターで待ってる奴らに向かって「待って待って」と追い掛けた。
させるか、バーカ、ふざけんな。
Aは小声で「助かりました、ありがとうございます」と言って鍵を渡してきた。
俺はうーんと考えた振りをして「報酬に明日のシフト教えて」とねだり顔をすると一瞬キョトンとしたAは営業スマイルで「夜勤です、きょうはそろそろあがりです」と言った。

ん？これはちょっとチャンスなんじゃね？
あした夜勤ならこの後の時間もちょっと……あるんじゃね？

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