重なる鍵を差し込むように ページ30
「写真なんてねえよ」
そう言ったキヨくんはあの子の話を俺から切り出し時よりも不機嫌な顔になった。
可愛ええと言うのは失敗だったか。
いや、キヨくん、俺の好きな子知っとるやろ!
独占欲が強い男は嫌われるで、と冗談を言える空気感でもなかったし、2人に聞かれて大事になるのも嫌やろうしと、トイレと理由つけて外に連れ出した。
「何だよ、好きなの?」
「何でそうなんねん!俺の好きな子知っとるやろ」
「じゃあ、なに」
「ええか、キヨくん、この道真っ直ぐ行ったとこに焼肉屋があんの知ってるよな?」
真っ直ぐ続いた道を見ても「そんなんあったっけ」と言い出した。
ほんまに覚えてないんか……?
「2年前、よく行ってたやろ!もうなくなっちゃったみたいやけど」
うーん、と唸りだしたキヨくんは「あ!ああ、あれここかー」とやっと思い出した。
そして俺らが立ってる目の前にあるホテルを指差す。
「ここ、潰れたキヨくんを運んだことある」
「え?」
そう、あの子、あの時に応対してくれたフロントの子だった。
キヨくんが何度か潰れてホテルに運んだことはあったけど翌朝スッキリした顔で服も汚れることなく出てきたのはここのホテルだけだった。
きっとあの子が介抱してくれたんやろうけど、キヨくんは綺麗サッパリ忘れていた。
いつだか、禁酒をしてから「どっかのホテルのお姉さんに実況論語っちゃったけど、すごい感動してくれた人いて俺まで嬉しくなっちゃったんだよね、顔うろ覚えだけど」みたいなこと言ってた。
そこまであの子だとは考えにくいし、俺としてはどうでもええけど。
「あの子も見たことある」
「もしかして、俺が実況論語ったのも……」
「そこまでは知らんけど」
「言われたら何か思い出してきたかも」
「あの子は覚えてると思うで、お前と違って仕事してたんやから」
俺はそう言ってから「先戻るわ」と店の中に入った。
数分後、何故かチャラチャラしたまた別の女を連れて部屋に戻ってきたキヨくんに俺らは驚いたけど、「ごめん、便所で捕まった」と言っていてホテルの従業員の人らしかった。
キヨくんのあの子は礼儀正しく落ち着いている感じだったけど……いろんな種類がいるんやな、と笑いかけたけどキヨくんはまだ何かを考えてるようだった。
うっしーとガッチさんと打ち解けたその子は「あ、スペシャルゲスト呼んでくるね!」と言うとキヨくんにニヤニヤ笑いかけていた。
何となく予想はついたけど、
「あ……A」
あの子が来た。
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なみの - とっても面白いですね( ´∀`)相変わらずの天才っぷり・・さすがです!毎回素敵なお話ありがとうございます(≧∀≦) (11月5日 13時) (レス) id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - 赤の黒犬さん» これは完全に動画内のヨさんのテンションで書いてたので反応どうかなと思っていたので好きと言って頂けて良かったです。たくさんの作品にコメント本当にありがとうございます。レスが遅くなりましたが毎回見て元気を貰ってます! (2021年8月18日 0時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
赤の黒犬 - キヨさんの嫉妬とか御馳走様過ぎる。キヨさんが元々レトさんに憧れていた節があったからこそキヨさんの嫉妬って映えると思ってニヤニヤしてました。キヨさんがドルヲタとか女優ヲタとして動画内で喋っているテンションで恋して、本人っぽさが倍増するのも好きです。 (2021年8月9日 2時) (レス) id: d5158b45c8 (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - siratama〇さん» siratama〇様、コメントありがとうございます!初の学パロ以外での長編ですので読者の方の反応が気になっていたのですが好みと言って下さりとても安心しました。そして長編に対しての励ましのお言葉もありがとうございます!とても嬉しいです。頑張ります! (2019年3月9日 22時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
siratama〇(プロフ) - 好みof好みです。長編苦手だと仰りますが胸を張って得意だと叫べるレベルで素晴らしいです。素敵なお話ばかりで読むのが楽しみの1つになっています。ずっと応援しております、頑張って下さい! (2019年3月9日 20時) (レス) id: 1503b2e324 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:luco | 作成日時:2019年3月7日 1時