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知らなかった激情。
こんなにも、誰か一人に固執するなんて考えたこともなかった。
今までに心を通わせた女性がいなかったわけじゃない。
お付き合いをしている間は真剣だったし、ちゃんと好きだったはずだ。
けれど、こんな。
こんなにも。
コントロールを失うほどの衝動に駆られた経験は、一度として無かった。
皮肉なものだ。
それほどの想いが。
それほどの─────・・・恋が。
向かう先は。
相棒で。
同じグループで。
─────・・・同性で。
およそ、恋をする相手としては絶対に間違っている存在だなんて。
別に偏見を持っているわけではない。
LGBTQに対しては、本人が良ければそれでいいのだろうと思っている。
尊重されるべきは本人の意思であり、趣味嗜好に他人がどうこう言うべきではない。
一般人、ならば。
俺自身は、普通の、どこにでもいる人間だと思っている。
けれど、メイクをしてもらってスポットライトを当ててもらって、そこに努力と経験を重ねて今・・・タレントとしてテレビに出させてもらっている。
だから、一般の方々よりも少しだけ目立つ。
そんな目立つ人間には、やはり求められる“普通”というものが存在するのだろう。
何が普通で何が普通ではないのかわからないけれど、人は往々にして己と違うモノには攻撃的だ。
考えれば考えるほど、己の気持ちの行き着く先はやはり破滅しかない。
ならば。
ならば今、斬られておくべきだろうか?
いっそのこと、その方が傷は深くても治りは早いかもしれない。
グッと震える指先を握り込んだ。
「きた、「藤ヶ谷さーん!もう出られますか?」
意を決して北山に呼び掛けた声は、控え室前辺りからマネージャーの大声によって掻き消された。
一瞬だけ俺を見た北山の視線はすぐにマネージャーへと移る。
「藤ヶ谷さん、急いでください。もう出ないと予約の時間に間に合いません。」
予約?
・・・・・・あ!?
今日、俺、ワクチン摂取か!!!
「はい、すぐ準備します。」
控え室へ向かえば、同日摂取の渉とニカと宮が俺を待っていた。
会社が用意してくれた職域摂取。
色々なスケジュールを加味して、全員同日にするよりはとずらされた摂取日。
「必要な書類はこちらで持ってます。急かしてすみません。」
慌ただしく動きながら、ちらりと視界の端に北山を捉える。
その表情は柔らかで。
「いってら。」
ひらひらと振られる右手に少しだけ心が痛かった。
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流華(プロフ) - sioriさん» 一番乗りコメント、すごい嬉しいです♪♪やっぱりここを少しだけスクロールすると「作成日時」が残るじゃないですか。その日付を残したくて(笑)素敵な恋!?(笑)んー・・・素敵な恋もそれなりにありましたけど、素敵じゃない恋もたくさんありましたよ(笑) (2021年9月18日 23時) (レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - 流華さん、やった!1番(笑)北山くんの誕生日に続編を更新してくれて嬉しいです!そしてやっぱり流華さんの言葉選びが本当に大好き。どんな素敵な恋をしてきたんですか?(笑)ふふ。この先どうなっていくのか楽しみです! (2021年9月17日 18時) (レス) id: 2b4c1e0fcf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2021年9月17日 18時